総一テキスト
□+新婚さんいらっしゃい
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「そこら辺に適当に座ってて」
「ああ、失礼させてもらう」
家の中を案内された総士は、和室の居間に通された。
慣れた手つきでエプロンを付ける一騎を見ながら、「なんか新婚みたいだなーへへへ」なんて顔には全く出さず、ひとり悦に入っていた。
トントントン
包丁の小気味よい音。
エプロン姿の一騎(重要)。
丸いちゃぶ台に頬杖をつきながら、総士は幸せに浸っていた。
「・・・今日の献立は、何なの?」
「んー?今日はー蓮根と豚肉と人参と椎茸の煮物と、ホウレン草の胡麻和えと、ワカメの味噌汁」
後ろを振り返らず、手元を見ながら言う一騎。
「楽しみだな、一騎の手料理」
「そんな大げさなものじゃないんだぞ?」
一騎の両耳にほのかに朱が混じったのを、総士は見逃さなかった。
「いいんだよ、一騎の作ったものなら、なんだって・・・」
なんだって、って何だよ、と一騎が総士に問おうと振り返ったとき、目の前に総士の端整な顔があり、一騎は思わず後退したが、台所に拒まれた。
「なっ・・・!お前、危ないだろっ!いきなり後ろにいるなんて!」
カタン、と包丁をまな板に置き、ぶつくさと文句を言う一騎。
その頬は紅潮していて、可愛らしいことこの上ない。
「俺・・・一騎が食べたいなぁ・・・」
一人称『俺』。
総士が本気になった合図だ。
「ちょ・・・!そ・・し!この・・・!!」
なんてお決まりのパターンの奴なんだ、と一騎が内心焦りながら抵抗していると、玄関からズンズンと響く足音が聞こえてきた。
「・・・最悪・・・」
総士の腕の中でぽつりと呟いた一騎の声は、はっきりと総士に聞こえていた。