総一テキスト
□+ストローロジック
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―――アルヴィス内の休憩室。
珍しく人気のない其処には、今は総士と一騎の二人だけがいた。
「で、聞いてくれよ、総士・・・。親父がさ、意外と好き嫌いが多くて・・・。毎日の献立をどうすればいいのか、最近はそればっかが悩みで・・・」
う〜、と口を尖らせて唸りながら、コツンと机に顎を乗せる一騎。
その様子がどこか小動物めいていて可愛らしく、思わずニヤけた口元を、総士は慌てて隠した。
「(なんか考えてることが新妻みたいだ・・・)真壁指令に好き嫌いがあるなんて意外だな・・・」
「親父、変なとこで子供染みてるからさ。子供舌で、甘いモンとか肉とか結構好きだし・・・。ピーマンとかグリーンピースとかニンジンとか、あんまり好きじゃないんだ」
ふぅ、とため息を吐き、手元にあるドリンクのストローを咥える一騎。
「それは・・・なんというか・・・」
流石の総士もここまで凄いとは思わなかったのだろう。
僅かだが目を見開き、驚きを隠せない。
―――あの真壁指令が。
子供舌で、子供のような好き嫌いをするなんて・・・。
普段気丈に指揮を執っている彼とはあまりにも違う事実に、少々戸惑う。
が。
(一騎も犯罪的に可愛いけど・・・真壁指令も意外と可愛いなぁ・・・)
この男には、それすらも「可愛い」の材料になり得るのだ。
「ぅぁ!」
「一騎?」
総士が危なげな思考に入っていると、今までドリンクを飲んでいたはずの一騎から、妙な声が上がった。
「んんー!」
恐らく、コレ、と発音しているであろう一騎の薄桃色の唇には、紙コップから引き抜かれた1本のストローが咥えられていた。
「・・・・あ」
注意深く見てみると、ジャバラストローの曲がる部分が下になっている。
一騎は、ストローを上下逆に挿してしまったのだ。
「・・・はんはほれ、ははひはひは(なんか俺、馬鹿みたいだ)」
ストローを逆に挿したことに羞恥を覚えたのか、少し朱が射した頬。
伏せられた、長い扇形の睫毛。
喋る度に上下に揺れるストロー。
自然と窄められた唇が、いやに淫らに見える。
そんな色気を惜しみなく(本人自覚なく)振り撒く一騎に、総士がポツリと本音を漏らした。
「・・・・・・一騎、誘っているのか?」