熱唱

□歌う…
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スクリーンには燦々と輝く太陽が映し出されていた。それに伴って、シティ7内の気温もやや高めに設定される。
出掛けるにはもってこいの気候だ。

午前中にリハーサルが早く済み、残りの半日はメンバーそれぞれの自由な時間になった。
今日は休みだと聞いていたアイツに、連絡を入れる。
何処へ行くのかとしつこく尋ねるミレーヌを適当に流し、俺は約束の場所に向かった。

その気になればいつでも暇な俺と違って、軍人のアイツは休みが少ない。
たまの休みもミレーヌとのデートに消えていくアイツに、二人きりで会うのは久し振りだ。

友達、と言えるほどでは無いが、普通に話をするようになったのはごく最近。
他愛も無い話をして、ダラダラ過ごすだけだが、それなりに楽しい。


薄い水色の、変に尖った頭が木々の隙間から見えた。

「よぉ、ガムリン」

ポケットに手を突っ込んだまま、声を掛ける。

振り返ったアイツは、律儀に片手を上げ、やぁ、と返した。






草の上に直接座り、ギターを抱えてメロディーを口ずさむ。
同じように座るアイツは、目を閉じて歌に聞き入っている。

こんな時間も嫌いじゃない。より多くの人に俺のハートを感じて欲しいと思うが、誰か一人のために歌を唄うのは気持ちいい。

歌に関心のない筈のアイツが、俺の歌に興味を持ってくれることが嬉しい。


やがて日が暮れかけ、そろそろ帰ろうかと腰を上げた俺に、アイツは言った。


「最近、お前の歌に力が無いような気がする…」










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