みじかい

□夜はきみに優しいか
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「先輩、アリア先輩」
「先輩は、怖くないですか」

私の名前を呼ぶくせに、私を見越してなにか違うものを見ている後輩を、私は抱き締めたかった。
でも、出来なかった。
ただ掠れた声で聞き返すだけ。

「なにが」
「……夜が」

レギュラスは、泣いていたかも知れない。
でも泣いていなかったかも知れない。
どちらにせよ、今となっては確かめる術もないのだけれど。

「暗闇が、怖くはないですか…?」

私はなんと答えれば良かったのか。
それは未だに分からない。
あのときの私はもっと分からなくて、ただただレギュラスをどうにかして救ってやりたいという見当違いなヒロイズムに酔っていた。
そうして、言った。


「怖くないよ」


それを聞いたレギュラスはそうですかと呟いて、そこから先は覚えてない。

私はなんと答えれば良かったのか。
誰かそれを教えてはくれないだろうか。
過去の私にそれを、伝えてはくれまいか。
かわいそうな私の後輩を、闇に呑まれたレギュラスを、助けてやってはくれまいか。




また、あの日と同じ冷たい夜が巡ってくる。
あの子はもう、苦しんではいないだろうか。
いや、あのときだって苦しんでいたかなんて分からない筈だけれどでも、きっと苦しんでいたに違いないと私は決めつける。

あの子は今、どこにいるんだろう。
あの子を呑み込んだ闇は今どうしているんだろう。
その闇が次に私を呑もうとも、世界を呑もうとも、構わないから。
だからどうかレギュラスを包む暗闇が、彼にとって優しいものでありますように。








夜はきみに優しいか、?



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