みじかい

□囲う、愛
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「アリアは甘いね」

リドルが囁く。
甘い、あまい、それはどういう意味なのか。

「甘い味が、するよ」

そう言って私の頬を舐める、彼はこんなときでも端正な顔立ちだ。
私はただの人間だ。
甘い味など、する訳がないのに。
リドルが言うならもしかしてと考えてしまう自分が、恐ろしい。

「可愛いよアリア、きみは本当に可愛い」

リドルはうっとりと呟きながら私の髪を撫で付ける。
ああ、と私は思った。
逃げられない――

「可愛い可愛い僕のアリア…きみを柵で囲ってしまって、独り占めしたいよ」

そうしたらどんなにか幸せだろうね。
リドルは微笑む。

「私、を、愛してるって、いうの…?」

やっとのことで絞り出した声はそんな問いを紡いだ。
聞きたいこと、言いたいことは、もっと他にある筈なのに。
リドルは私の問いに嬉しそうな顔を見せ、もちろんだよと言った。

「ああアリア、なぜそんなことを聞くんだい?まだ分からないと、そう言うのかい?」
「……」
「こんなに、こんなに、僕はきみを愛しているのに…」

私の脳に刻み込むように、リドルはゆっくりと言う。
リドルの声が頭の中で反響して、思惑通り私は彼の言葉を忘れられないだろう。

「ああ、ああ、もう離してあげないからね、アリア…愛しているよ」

恍惚と囁くリドルは、私の唇にキスをした。
私は身を硬くしたままそれを受け入れる。
そのまま舌が侵入してきて口内を荒らすのにも、私は抵抗しなかった。

「アリア、アリア、アリア…ああ」

恍惚と囁くリドル。
酸欠で溶けた脳みそは、その息苦しさを愛と変換したようだ。

「リドル、」

「愛してるよ」




囲う、愛。
(独り占めしたいんだ、きみを)







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