みじかい
□後輩の可愛がり方
1ページ/1ページ
可愛い可愛い後輩、私のレギュラス!
彼は今日も麗しい。
「れぎゅー!」
「うわあ!…先輩、いきなり抱き着くのやめてください!」
「ごめんごめん。怒ってるレギュラスも可愛いよぅ」
突然のハグ、からの頭をなでなでしたらレギュラスはむっとした顔で私を見た。
私より幾分も背は高いのに、まるで小さな子供みたいに可愛い。
堪らなくなって思い切りにやにやしながらもう一回抱き着いたら、全く先輩は…とかなんとかレギュラスが呟いた。
「そうやってすぐ抱き着く癖、やめた方がいいですよ」
「ええ〜なんでえ」
「なんでって…」
困ったように言葉を探すレギュラスもやっぱり可愛くて、にやにやするのを抑えられずその顔を見上げていた。
一生懸命わたしに説明しようとしているのだろうけど、馬鹿なわたしは多分説明されても分からないだろう。
でも真面目なレギュラスはやがて納得のいく言葉を見つけたのか、しがみつくわたしの腕を優しく外しながら言う。
「あのですね、先輩」
「なに?レギュ」
「…僕は、誰彼構わずに抱き着くのはやめた方がいいって、言ってるんです」
ぽかんとした顔のわたしを見下ろしながら、レギュラスは更に続ける。
「先輩、僕以外にも…例えば兄さんとかにも、平気で抱き着くでしょう」
「え、うん」
「だから…それが、」
レギュラスはそこで言葉を切った。
そのあとの言葉はわたしには想像もつかない、なぜなら馬鹿だから。
「…それが?」
「……それが、良くないって言ってるんですよ」
「なんで?」
頭のいいレギュラスの考えは、わたしにはどうしても分からない。
ちゃんと説明してくれなきゃ分からないのだ。
でもレギュラスはなぜか頬を仄かに赤く染めて言い淀んでいる。
「先輩、そんなに人に抱き着くのが好きなんですか?」
「うん、好きだよー!」
ジェームズもリリーもシリウスもその他諸々、わたしは好きな人に抱き着くのが好きだ。
わたしはスリザリンだけど、みんな気にしないでくれる。
「きみみたいなのもスリザリンにいるんだね」とか時々ジェームズ辺りに言われるけど、彼はいつも笑顔だ。
謗ってるんじゃないって分かる。
だから大好きなレギュラスに抱き着くのはわたしの中では至極当たり前のことなのだけど…。
「…レギュがいやなら、やめるよ…?」
「え、」
「もうレギュに抱き着くのやめるよ。そんなにいやなら無理やり抱き着きたくないし」
おずおずと言ってみたのだけど、レギュラスは難しい顔をしている。
そんなに抱き着かれるのがいやだったのだろうか。
嫌われたらどうしようと慌てていると、レギュラスがその綺麗な形をした唇を開いた。
「そうじゃ、なくてですね」
「…?」
「…っ僕、僕以外に抱き着くのをやめて欲しいって、そう言ってるんです…!」
さっきよりも顔を赤くしてレギュラスは叫んだ。
わたしもさっきよりぽかんと口を開けてレギュラスを見る。
なんで、どういう意味?、わたしがそう尋ねる前にレギュラスは矢継ぎ早に言葉を紡いだ。
「先輩が、僕以外に抱き着くなんて…そんなの考えただけで、いやなんです。嫉妬ですよ嫉妬、先輩、僕のこと笑ってくれて構いませんよ。僕兄さんたちに嫉妬してるんです!」
レギュラスは恥ずかしそうに、そしてどこか悲しそうに言う。
ああもしかして、さっきのわたしと同じなのかなと思った。
わたしに嫌われるのが怖いのかな、って。
自意識過剰なだけだろうか。
わたしから目線を逸らして、口を閉じてしまったレギュラスの手をそっと握る。
「笑わないよ」
レギュラスがわたしに目線を戻した。
綺麗な目。
わたしはなぜか嬉しくなる。
「分かった。わたしもう他の人に抱き着かない!」
レギュだけにするよ。
そう言って笑ったわたしに、レギュラスも笑顔を返してくれた。
「先輩、僕の言った言葉の意味分かってます?」
「……」
「分かってないでしょうね、やっぱり」
レギュラスはわたしの手をほどいて、そして握り返した。
「…先輩が意味に気付くまでは、僕に一方的に抱き着くの、許してあげます」
珍しく上から目線で喋るレギュラス。
その顔はまだ赤く染まっているけれど、レギュラスはどこか嬉しそうだった。
(僕はね、先輩が好きなんですよ)
(先輩は気付いてないんでしょうけど)
(僕がそれを告げるまで、…先輩待っててくれますか)