みじかい

□かなわない
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ぎゅう、とアリアが僕にしがみつく。
そっと下を見下ろせば真っ赤な顔。
まだ慣れないのかな。何度も同じことしてるのに。
少しでも緊張が和らぐようにと額にキスを落とす。
なんてね、余計に体を固くすることはもちろん承知の上だよ。

「り、ます、怖い顔、してる…」
「…そう?」

いけないいけない、アリアを怖がらせてしまったようだ。
小さな恐怖で震えるきみも可愛いなんて言わないよ。

「アリア、…手、外して?」

胸元を押さえるアリアの片腕。
僕を拒むバリケードのつもりだろうか。ふむ、気に食わない。
やんわりとそれを外しにかかると、案外簡単に解けた。
多分僕に外されるのを待ってたんだろう。
きつく結ばれたネクタイを緩めて、まずはブラウスのボタンを三つ開ける。
そして現れた普段は見られない肌。
しなやかな首筋に、尖った鎖骨。

「ふわ、」

甘い匂いに誘われるように首筋に唇を寄せればアリアから素っ頓狂な声が上がった。
自分の声に恥ずかしがっているのか、口を手で押さえている。
ちょっと、それじゃつまんないでしょ。
その手も外すとアリアは今度は固く唇を閉じてしまった。
いつまで声を出さずにすむか、まあそれを見るのも一興だろうか。
少し荒々しく首筋に吸い付くと目に鮮やかな赤が散った。

「アリア、もう寒いからもう少し厚手のセーターかカーディガンを着た方がいいよ」
「………っ」
「こんなに薄いと体のラインがみんなに分かっちゃうだろ?」

カーディガンのボタンは既に外し終えている。
寒々しい白のブラウスは染み一つなく、純粋さを思わせた。
熱を持たないはずのそれは、アリアの熱が移って仄かに温かかった。
音もなく、残りのボタンも外していく。
一つ外れる度に、アリアはひくりと震えていた。
やがてアリアの上半身を覆う砦が一つ消え、残るはフリルで飾られた下着一つとなった。

「…アリア、カーディガン着てるからってもう一枚くらい着るべきだと思うよ?」

アリアは聞こえないふりをしている。
口だけでなく目まで閉じて、完全に僕を拒絶するつもりらしい。
ちょっとムカついたので、なんの前触れもなく胸をふに、と揉んでみる。
途端にアリアの体が跳ねた。

「ひゃ、ぅ…っ」

あっさりと声を上げた自分に戸惑うようなアリアの表情に、僕は笑みを隠せない。

「随分と可愛い声だね」

アリアの瞳にじわりと涙が浮かぶ。
震える声でアリアは僕の名前を呼んだ。

「リーマス、」
「…なんだい?」
「い、意地悪、しないで…」

ああ、もう。
そんなに切ない声でお願いされたら。
聞いてあげないわけにいかないじゃないか。
次から次へと流れてはシーツに滲んでいく涙を唇で舐め取って、出来る限りの優しい声でアリアの耳元で囁いた。

「ごめんね。アリアがあんまり可愛いから、苛めたくなっちゃって」
「…リーマスの、ばか…」
「ちゃんと優しくしてあげるから。許して」

その言葉の証のように、さっきより幾分も優しく首筋にキスを落として柔らかく噛み付けば、アリアはもう一度僕を馬鹿と弱々しく罵った。
そして僕の首に腕を回して仕返しのように唇に噛み付いてきた。
全くもう、可愛い子。
よしよしと頭を撫でると満足したように笑うアリア。

「かなわないなあ」

思い切り抱き締めた体は小さくて柔らかくて、甘い花の匂いがした。




もう降参?





(困った顔も、笑った顔も、全部見たくて)
(苛めたくも甘やかしたくもなるんだ)








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