みじかい
□シュガーガール
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アリアはまるでお砂糖だ。
甘い甘い女の子。
僕の大好きなチョコレートみたいに、甘くて僕をとろり、溶かしていく。
「リーマス、リーマス」
「なんだい?」
「あのね、これ作ったの!もし良かったら、食べて?」
そう言って笑うアリアが差し出したのは白い箱。
受け取って中を見ると、チョコレートケーキとおぼしきものが入っていた。
漂う香りに思わず喉が鳴る。
「ありがとうアリア、早速頂くよ」
「うん!」
はいこれ使って、アリアはフォークとお皿も渡してくれた。なんて用意がいいんだろう。
談話室のふかふかしたソファに座って、ふわふわのスポンジケーキを一口含む。
うわ、おいしい。
甘いものに肥えた僕の舌でも素直にそう思うくらいケーキはおいしかった。
「すごくおいしいよ、アリア!」
「えへへ、実はちょっと前から練習してたんだあ。リーマスの好きなチョコレートのケーキあげたいなって思って、やっぱりおいしく作りたいなって思って…リリーにも付き合ってもらってね、厨房で何度か作ったの」
はにかみつつそう言うアリアが堪らなく愛しい。
僕のためにそんなにしてくれるなんて。
僕のこと好きなんだなあ、なんて思ってしまう。
でも大丈夫、僕だってアリアが好きだ。大好きだ。
ケーキを乗せたお皿をテーブルに置いて、アリアを抱き締める。
突然のことに慌てているアリアからはいつもの花のような匂いに加えて微かにチョコレートの匂いがした。
「わわ、リーマス、どうしたのいきなり!」
「ううん、アリアのこと好きで堪らないからさ、我慢できなくて。ごめんね?」
体を離すと、アリアは真っ赤な顔で僕を見上げていた。
その頬をぺろりと舐めるといつもよりずっと熱い体温が舌に伝わる。
アリアがびくりと体を震わせた。
「ひゃ、っちょっとリーマス…!」
うにゃぐにゃと声を上げる苺の色をした唇があんまりおいしそうなので、ぱくりと食べてしまった。
アリアはきょとんと目を開いたままだ。あ、この顔可愛い。
アリアの唇は甘かった。
そう感じるのはきっとさっきのチョコレートケーキのせいだけじゃないはずだ。
緩く吸ったり、舐めてみたり。たまには歯を立ててみたり。
柔らかい唇を色々と味わって、気紛れに離れてみると、アリアはわなわな震えて叫んだ。
「り、ますの、ばか!」
「あはは、馬鹿とはひどいなあ」
「もう、いきなりこんな…恥ずかしいことするなんて…」
段々小さくなっていく語尾。
とうとう俯いてしまったアリアが、ケーキ食べてたらいいじゃない、と小さく呟くので笑ってしまった。
「仕方ないだろ、アリアの方がおいしそうだったんだもん」
「っな…!」
「実際おいしかったよ、すごく。だからもう一回食べてもいいよね?」
いただきます。
ちゃんとそう言ってからもう一度、可愛らしい唇に噛み付いた。
ああ、おいしい。
甘い甘い味がする。
唇も、唾液も、熱い頬も、なめらかな首筋も、涙さえもがひどく甘いのだ。
アリアはやっぱりお砂糖でできているんだと確信した。
そして僕はまた、湯煎したチョコレートのように、とろけていく。
(リ、リーマス、ここが談話室だって忘れてるのかなあ…)
(馬鹿だなピーター、ありゃわざとやってんだろ)
((きみは僕だけの、シュガーガール!))
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