みじかい

□剣呑、剣呑
1ページ/1ページ





僕、人狼なんだ。
苦しそうな悲しそうな顔でそっと告げられた真実に驚かなかったわけではない。
でも欠片も怖くなかった。
リーマスが誰よりも優しいの、わたし知ってるから。
そう言えば彼は心底安心したように笑った。
そんな事実、別段わたしたちの関係を脅かすものではない。
それよりわたしはリーマスを噛んだ人狼が気になって気になって仕方なかった。
聞けば噛まれたのは子供の頃だと言うではないか。
わたしはひどく苛立った。
幼いリーマスはそれはそれは可愛らしかったろう。
そんなリーマスの柔らかい肌に無惨にも歯を食い込ませ皮膚を食い違ったそいつをバラバラに引き裂いてやりたかった。
どんな感触だったのかしら。どんな味がしたのかしら。リーマスはどんな声で泣いたのかしら。
狡い狡い狡い狡い狡いわそれを全て独り占めするなんて!
可哀想なリーマス。
痛かったでしょう、怖かったでしょう、苦しかったでしょう。
大丈夫もう大丈夫わたしがいるのだから。
わたしがあなたの支えになってあげる――。



安堵からか涙を流すリーマスに、そっと微笑んでキスをした。
リーマスを今まで苦しめ、わたしすら知らない幼い彼を知り、その上そんな彼を蹂躙したグレイバックという人狼の名を脳裏に刻み付けて。
いつか殺してやろうと心に決めた、それは月の綺麗な夜だった。





((剣呑、剣呑。危ないくらいにあなたが好きよ))








.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ