WING
□リデリア編 卒業試験
1ページ/15ページ
閃光が走る。
モンスターのよけるステップに合わせ、前へ、前へ、切り裂く。
モンスターは後ろへよけた反動を使い僕に一気に飛びかかって来る。
僕は後ろへ下がりながら剣を下から振り上げる。
銀色の閃光は弧を描きながらモンスターを捉えた。
相手は、例えウルフと言えども、最近急増している"原因不明の凶暴化"によって強くなっている。
侮るわけには行かない。
「カナト、後ろ!!」
パートナーのメイシェンが叫ぶ。
僕はとっさに体をひねり、左足に重心をかけてウルフを切り裂く。
そのまま背後を狙って来たウルフも遠心力を使い、右足で回転蹴りをした。
打撃を与えたその直後、後ろにいたメイシェンの殺気を感じた。
僕はとっさに上へ跳躍し、メイシェンがランスでウルフを突いた。
メイシェンがそのまま上へ投げ飛ばし、
そいつを僕が、
切り落とす!!!
『雷空斬!!』
僕が着地するころには、勝負はついていた。
「はぁ、終わった終わった。お疲れ様、メイシェン。」
"私生活の僕"に戻る。
いつものほほんとしてると言われる顔でメイシェンに話しかける。
おだんごに三つ編みとこの辺では、珍しいが、黒い髪がその不思議さを打ち消していた。
「カナト、お疲れ様〜、じゃないでしょ!!まだ終わってないのよ。今回は、卒業試験でノルマクリアして、早く帰らないと卒業できないんだからね!!」
すっかり忘れてた。
僕の住むリデリア王国は、王政で、国王と国を守るのが騎士の仕事。
その騎士になるために通うのが騎士学校。
僕もその学生の一人で六期生。ただ今、卒業試験の真最中です。
「そうだったね。さぁ、帰ろうか。」
そう言って学校に帰ろうとした時、どこからか子どもの泣き声が聞こえてきた。
僕はその方向へ走りだした。
「ノルマはクリアしたけど、のんびりしてちゃダメよ。善は急げって言うし…って、カナト、どこ行ってるの!?」
メイシェンの言葉も聞かずに僕は声のする方へ走って行く。
その先で見たものに目を丸くした。