WING

□リデリア編 卒業前夜 エルザ′s side
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それが合図となり、二人で同時に踏み出した。

風をきる音が耳元でする。音が大きくなるにつれ、俺もカナトも加速する。

先に切りかかったのはー俺だ。

下段から斜め上に振り上げるが、カナトは俺の軌道を自分ので逸らしながら、バックステップで後ろにさがる、と俺が認識した次の瞬間、さがった時にかかった体重移動を利用して突きを繰り出して来る。

すれすれの所でさばき、木刀を横凪に払う。カナトがバックステップでさがったところに下から振り上げる。

避けきれないと思ったのか、そのまま木刀で受け、鍔迫り合いへ。
油断も隙も無く、お互いバックステップでさがり、体勢を立て直す。

動いたのは俺の方が早かった。

いまだに静止状態のカナトに一閃いれる。寸止めするつもりが誤って振り切ってしまったが、打ち抜く感覚が無かった。

ーまさかと思った。

そのまさかの事態に気づいた時には後ろに回られていた。
幻影。騎士団の幹部級のやつらでやっと使えるようになる代物技だ。それを明日卒業とわいえ学生がいとも簡単にやってしまうなんて…。

ったく、やっぱコイツには驚かされるよ、本当。

すかさず反応して、カナトの木刀を受ける。

「…っち!!」

あれ?今、カナトの舌打ちが聞こえたような…。

カナトをそのまま押し返すと、足を伸ばしたまま後方に一回転して着地。そこんところも華麗に決めてくるのがアイツだ。って、見せ物かよっ!

俺は中段に構えて精神を統一した。俺だって見せられて終わりじゃねーよ!

カナトの攻撃をそのまま受け止め、喰らった分の力を上乗せして、一閃いれる。

カナトは目を見開いていた。

騎士団幹部級のやつらが使える代物を使う学生は、お前だけじゃねぇ。
カウンター。相手から喰らった攻撃分を上乗せして攻撃する素人には扱いづらい技だ。

カナトはそのままバックステップで、俺はバク転で後ろにさがった。

相手を見ると、カナトの口元が弧を描いていた。次の一撃で決めるらしい。

そっちがその気なら、こっちだって次で決めてやる。

要らない対抗心むき出しだった。
二人同時に踏み出して、俺は横凪に、アイツは上段から一撃を繰り出した。




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