WING
□リデリア編 それぞれの道へ…
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卒業式が終わり、正門付近が騒がしくなる。荷物を持った卒業生や、在校生、教官長を始めとした教官方などもいて、人で溢れかえっていた。
街でフィルと合流して、卒業パーティーをする為にさっさと門を出ようとした時だった。
「ディルアさん!!」
呼び止められて、声のする方を向いた。
そこに立っていたのは同じクラスの女子だった。
「どうしたの?」
そう言って彼女に近づくと、その女子は顔を赤らめて目線を落とした。
「えっと、その……第二ボタンください!!」
いきなりの申し込みに目を丸くした。
卒業式の日に女子が好きな男子に制服の第二ボタンをもらうという伝統が、この騎士学校にもあるわけですが………。
その伝統に則ってか、僕もやはり迫られました。
………好きだよね、そういうことするの。
「ごめん、制服は大事にとっておきたいから…」
敵等に答えると、彼女は少し悲しそうな顔をした。
「そう、ですか。ごめんなさい。それじゃあ、またどこかで。あなたに白翼の御加護がありますように」
「うん、またどこかで。あなたに黒翼の恩恵があらんことを…」
そう言って、手を振って別れた。
さっき言っていたのは、ちょっとした挨拶みたいので、それぞれ二大英雄を表していて、白翼はリオの英雄、ツバサ・リナリア・クロディリアを黒翼はネルの英雄、黒鉄
翼(クロガネ ヨク)のことを表しているんだ。
正門へ向かって歩き出した時、尋常じゃない声に本日二度目の悪寒が走った。
嫌な予感がしたから、恐る恐る振り返ってみたけど…
予感的中!!やっぱり無視しておけば良かった。
「カナト君!第二ボタンちょうだい!!」
「ディルア先輩、私にください!!」
「第二ボタンちょうだい!!」
結構な人数の女子が団体ご一行様でこちらに迫って来ていた。
一人だけならまだしも、あんな人数に囲まれるのだけは勘弁してほしい。
囲まれる前に、急いで正門に全力疾走した。
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