雑文

□GIVE ME LOVE.
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どしゃ降りの夜だった。
夜の闇に
溶けてしまいそうなほど
真っ黒な猫がゴミ箱の横で
ずぶ濡れになりながら
寒さに震えていた。


何故だか、
目をそらせなかった私は
猫の目線に合わせるように
そこへかがんだ。


「...おいで?」


どうやら警戒しているようで
私に視線を向けたまま
その場を動かない。


「風邪ひくわよ?
一緒におうちに行こ?」


藍色をしたその瞳は
何かを憎んでいるような、
何かを恐れているような、
悲しい色をしていた。


このままにしたら
死んでしまうかもしれない。
そう思った私は猫を抱き上げ、
アパートへ向かった。












「大丈夫だから。
そんなに警戒しないで?」


タオルで猫を拭いてあげ、
薄めた牛乳を皿に注ぐ。


「お腹すいたでしょ?」


猫はただ私を警戒した目で
見つめるだけ。
ピクリとも動かない。
この子はきっと、人間が
嫌いなのだろう。


タオルで拭いていた時に
気づいたのだ。
いくつもの古い傷が
あることに。
それはどう考えても
人為的につくられたもの。






「....お風呂入ってくるね。」


そう言って私は猫をおいて
風呂場へ向かう。






あがった頃には、
牛乳の入っていた器は
空っぽになっていた。
何故だかそれが無性に
嬉しかった。










この子がうちに着てから
一週間が経とうとしている。
相変わらず部屋にいても
私に近づこうとしない。
なので私はこの子に
触ることができずにいた。
食べ物は、私が
見ていると食べないのに
部屋に帰ってくると
皿が空になっている。


名前の無かったその猫に
私は"ロー"と名付けた。




理由はない。
なんとなく、その名前が
合う気がしただけだ。
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