雑文

□GIVE ME LOVE.
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そしてある日。
私はいつもどうり大学へ行き
部屋に帰ってきた。


「ロー、ただいまー。」


迎えにくるはずもないのに
なんとなく言ってみる。


「ローの好きな
缶詰買ってきたよ。」


いつものローの特等席である
部屋の隅のクッションに
目をやるが姿がない。


その代わり、いたのは


「よォ。」









「だ、誰!?あんた!」


知らない男だった。


「何で勝手に人の部屋に...!」


「お前が、勝手に俺を
連れてきたんだろ。」


その瞳の色には
見覚えがあった。
こんなこと、
信じられないけど、


「あなた...ローなの?」


何故だか、確信があったのだ。


「ご名答。」


男はニヒルな笑いを浮かべた。


「は..?え、なんで、
猫が....」


口をパクパクさせて
驚いている私に
ローは表情を崩さず答えた。


「ほとんどの猫は、
化けることができる。
ただ自分から正体を
明かさないだけだ。」


そんなことって...。
でも確かに、昔話の類いにも
"化け猫"とか出てくるし、


「ホントに、ローなの?」


「さっきからそうだって
言ってるだろ。」


このひねくれた態度。
なんともあの無愛想な猫に
相応しい。


今までももしかしたら、
私は知らない間に
人間の姿をした猫と
すれ違っていたのかも。






そんなことより今の問題は
どうしてローが人間に
化けたのかだ。


おとぎ話や
ドキュメンタリーなら
たぶん感謝の言葉を
述べられるのだろう。
「拾ってくれてありがとう」
とか。


でも、ローの口から出たのは
真逆の言葉だった。
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