小話
□I love you.
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昼間の熱はなりを潜めてすっかり夜が世界を覆った。冷たい海風が心地よく頬を撫で、汗の名残を感じる。光源は闇に浮かぶただひとつのみ。くわえられただけの煙草は、僅かな光すら灯すのが憚られてそのまま上下に揺れている。船員達はとうに夢の中。微かに響く音も夜の闇が覆い隠してしまった。甲板に伸びるのは2つの淡い影だけ。おれのと――…
とても、静かだ。
てめェの息遣いだけが聞こえる…いや、感じるのか
ああ…
「…月が綺麗だ」
「あ?ああ…確かにな」
静寂に少し波打つように溢した。
酒を煽っていたこいつも、それを破ることはなく至極静かに返した。
日中もこれくらい穏やかなら、ウソップ辺りが泣いて喜ぶんだろうな。
てめェは、今、おれが一世一代の大告白をかましたことに気がつきやしねェ
気づくはずもねェんだが
「月が…綺麗、だ…」
「…おう」
空の淡い光だけを見つめて、もう一度だけ
これが、今のおれの、精一杯の愛の告白
てめェはもう、気づいているのかもしれねェ
あと少しだけ。…もう少しだけ
気付かねェフリをしていてくれねェか
…月が綺麗なんだ。 てめェと見る月は、こんなにも…
――――――
夏目漱石流"I love you"の和訳でしたー
"あなたと見る月が綺麗です"
とかいうやつね。
それをサンちゃんに使わせたかっただけの、ふわっとした小話ですたっ(´・ω・`)キリッ
一度はゾサで使ってみたいシリーズですねっ←