君色MAGIC

□02
1ページ/3ページ







広い大きな、東京の都会の郊外に建てられた家。
周りは緑に覆われていて、庭も広々としている。

朝日が登って数刻が過ぎ、早くも鳥達は活動を開始しているようだ。




海王邸別荘。





名付けるとすれば、此処はそう呼ばれている。

そしてこの家の住人は―…。










1つのドアの前で、蜂蜜色の髪を持つ美少年がニッと笑みを浮かべた。


何かイタズラを思いついた、子供のような笑顔。


カチャリ。


軽い音をたて、扉を開く。


足の踏み場もないくらい散らかった部屋に、そっと入ってターゲットを発見した。
ベッドはこんもりと盛り上がっていて、布団からは小さな、少年と同じ蜂蜜色のフワフワした頭がちょこんと覗いている。


布団の盛り上がり規則的に上下しているところから見て、相当熟睡しているらしい。


少年は更に顔を綻ばせ、ターゲットの耳元に口を寄せた。






「千尋…。起きて。もう朝だよ」

『う゛―…』







千尋と呼ばれた布団の盛り上がりは、苦しそうに寝返りをうった。



「起きて…。入学式早々遅刻してちゃ、話にならないだろ?」

『……』

「起きてくれなきゃ、キスするよ?」




『……あ゛?(パチリ)』



とんでもない単語が聞こえたような気がして本能に逆らって目を開ければ、目の前には端正な顔立ち。

しかもドアップ。



寝ぼけた頭では状況が理解できず、ぼんやりと少年の顔を見つめる。





「おはよう、僕のお姫さま」



少年は、とろけそうな程優しい笑顔で微笑んだ。

…が、しかし。


『ふざけんなァァ!!』




布団から拳が飛び出した。
少年は予期していたらしく、身を翻して易々とそれをかわす。



機嫌が悪そうに思いっきり顔をしかめた少女が姿を現した。


身長146センチ、美少年と見せかけて実は姉の、はるかと同じ蜂蜜色のショートカット。

透けるように白い肌に、、さくらんぼのような唇。


ジッとしていればフランス人形と間違われそうなくらい整った顔立ちに、気の強そうな大きな目がいささか不釣り合いだ。





美形揃いで有名な天王家、次女の千尋ちゃんは今日から高校一年生です。







01:春うらら
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ