君色MAGIC

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「新1年1組の天王千尋さんの保護者さまー。天王千尋さんの保護者さまー。
いらっしゃいましたら至急本部まで―…」

「……は?」

入学式が終わり、新入生が各々の教室へ向かう頃。

ちゃっかり一番良い席を陣取り、片手にカメラをスタンバイしていたはるかは、珍しく間の抜けた声を挙げることとなった。

まぁ確かに妹の姿はどこにも見当たらなかったのだが…。
小柄な千尋は人混みに埋まってしまっているのかと一人苦笑していたのだ。
(『はるか!!またこの写真あたしこの子の陰で見えてない!!』「…本当だ。ごめんごめん(笑)」)


…それが何でいきなり呼び出し?


はるかの驚きも無理もない。

まさか、入学式初っ端から問題起こしたわけじゃないだろうな。


様々な憶測が飛び交う中、はるかは体育館のステージ側にある本部へ向かう。



「…すみません、僕が千尋の保護者ですけど……」



頭を下げて取りあえず近くにいた女性の教員に声をかける。


「あぁ、天王さん…ですね?」


「はい。えっと、うちの妹が何か…?」


もしかしたら大問題を起こしたのではないかと、多少冷や冷やしながら続ける。
まさかお宅の妹はバカすぎるので入学は取り消しますとか言われたら…。

しかし、帰ってきた反応は、はるかが全く予想していなかったことだった。


「あの…千尋さんが入学式前に他の1年生の方と衝突してしまったみたいで、お倒れになったんですよ」

「えっ?千尋がですか?相手の子じゃなくて!?」

「はい、私どもの不注意で…本当に申し訳ございません。今保健室で寝ていらっしゃいますので…」

「いえ、どうもご迷惑をかけたみたいですみませんでした」


千尋が倒れた、か…。
珍しいこともあるもんだ。

特に会話らしい会話もなく、女性教員に保健室に案内して貰っている間、はるかはそんなことを考えていた。

というか、入学式早々こんなんで大丈夫なのだろうか。








 * * *








「謝って済む問題じゃないのよ。もし大怪我してたらどうするつもり?」


その頃保健室では…。


腕組みをした棗が、うさぎを睨みつけていた。
美人が怒ると、黙って立っているだけで迫力がある。
棗に気圧され、うさぎは申し訳なさそうに俯いた。


類は類で、千尋の寝顔を心配そうに覗き込んでいる。


「千尋はね、スポーツ推薦枠で入学してきたの!!あなたプレーできなくなったら責任取れるの!?」

「ちょっと!!うさぎちゃんは少し滑っちゃっただけよ!?」

「わざとそんなことするような子じゃないんだよ。そこまで言うことないんじゃないかい!?」

「いい子だとか、そうじゃないとか、そういう次元の話をしてるんじゃないのよ!!」


棗の言い様に美奈子とまことがうさぎを庇いだしたため事態は混戦化してしまった。


そこへ…。


ガチャリ


「…おっと。まさかこんなに先客がいるとは思わなかったな」

「「はるかさん!!」」

「「「は、はるかさん!?」」」


イントネーションにかなりの差はあるものの、保健室にいた全員分の声が重なった。

はるかはうさぎ達を見つけて一瞬驚いた顔をしたが、うさぎの頭に出来たたんこぶを見ると、すぐに大声を挙げて笑い出した。


「もしかして千尋がぶつかったのって、子猫ちゃんだったのかい?
千尋が倒れるなんて、どんな石頭の子かと思ったら…。
…でも、君なら確かに納得だな」

「はるかさんひどーい!!…って、え?千尋…さん?って…」

「はるかさん、お知り合いなんですか!?」

「ああ、千尋は僕の妹だよ」


うさぎとまことに生まれた疑問に、はるかはウィンクして答える。

一瞬の沈黙。

そして…


「「「っっ!!えぇぇぇぇぇ!!!??」」」


「妹ぉぉぉぉ!!?」

「うっそぉぉ!!」

「ホントに!!?」


驚いてベッドに駆け寄る3人。


その様子を見て、はるかは「そんなに驚かなくても…」と苦笑していた。


その一方で、あんぐりと口をあけて驚いた顔をした人が此方に約2名。

 
「…はるかさん、この人たちと知り合い?」

「…嘘だろ。なんかイメージ狂うんだけど」


棗と類が、目を白黒させて問いかけた。


「イメージ狂うって…。類くんはいつも僕をどう見てたんだい?」

「うるさい子は相手にしないイメージ」

「私も同じく」

「最悪じゃないか」


女の子には誰にだって優しいのに。

はるかは少し不満げに呟く。

しかし、無限学園に転校する前…つまり、棗たちと一緒の都立中学校に通っていた時には、本当にそんなイメージがあったのだ。






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