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□レッドブルース
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定時ちょっと前に仕事を終えた私は自分の机の整理をして、定時になってフロアの人にお疲れさまです、と声をかけて出ていく。
今日は帰ったら借りてた映画でも観ようかな。美味しい紅茶でも飲みながら。
ああ、明日の洋服も考えなきゃ、とちょっと憂鬱になっていると、
「落としましたよ」
と、突然肩を叩かれて声を掛けられた。
びっくりして振り返ると、質の良さそうなブラックスーツを着た人が私の定期入れを差し出していた。
「…あ、すいません」
受け取って頭を下げる。
黒い靴はピカピカで、お給料高いんだろうなあ、なんて間抜けな事を考えてしまった。
「気をつけて下さいね」
くす、と笑った気配がしたのでちらっと視線を上げると、整頓で若そうな顔をした人だった。