Zoro×Sanji - 2
□惑星
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煌めく星々に囲まれた中、一際強く光を放つまるで宝石のような青い星。
その星はとてもよく似ていた。
思わず手を伸ばして、掴もうとした。
「しつないぷらねたりうむ?」
なんだそりゃ、とルフィが首を傾げた。
午後三時の暖かな日差しが差し込むダイニングでのおやつタイム、少し遅れて入ってきたウソップが抱えていた装置のことをそう呼んだ。
室内プラネタリウム。
「まぁまぁ見てみろって!自信作だぜぇ?」
言いながらウソップはいそいそと準備を始めた。
丸窓に暗幕を張り、抱えていた装置をテーブルの真ん中に置く。
暗幕で日の光が遮られて、部屋は薄暗くなった。その雰囲気にルフィが「夜だ!」とはしゃぎだし、つられてチョッパーも「夜だ夜だ!」と笑う。
そこまでお子様な反応ではないが、ナミも隣にいるロビンに楽しそうに笑いかけた。
サンジはキッチンカウンターに背をもたれかけながらウソップが準備する様子を眺める。
フランキーは『室内プラネタリウム』とやらの装置を興味深げに見つめた。
「世紀の大発明、とくとご覧あれ!」
ウソップは芝居掛かった口調でそう言うと、装置のスイッチをオンにした。
「うわあ・・・!」
「すっげー!!」
「きれえだー!!」
「まぁ、素敵」
「よくできたもんだな!」
スイッチがオンになった瞬間、パァッと部屋中に煌めく星が広がった。
各々が歓声を上げてそれを眺め、ウソップは得意げに鼻を高くする。
たくさんの小さな遍く星々と、大きな惑星がいくつか。
ロビンが長く細い綺麗な指で星を指差しながら星座の説明を始めると、その周りにクルーたちが集まった。
サンジはそれを聞きながら、ひとつの星に目が奪われて離せなくなった。
「ロビンちゃん、あれは?」
真っ青に輝く星。
「あれが、地球よ」
私たちの住む星。
深夜、サンジは誰もいなくなったダイニングの照明を落とした。
また明日もやろう!というルフィの言により、ダイニングに未だ置いてある室内プラネタリウムの装置。
サンジは煙草の火を消してから、それをもう一度テーブルの上に運んできてスイッチをオンにした。
途端に星が部屋に広がる。昼間に暗幕を張ってやったのより、鮮明に星が見えた。
地球は、よりいっそう青々と輝いていた。
その力強い、迷いのない輝きが、ひとりの人物をサンジに連想させる。
「美化しすぎか?」
ひとり小さく笑いながら地球に手を伸ばしてみた。
それはもちろんただの映像で贋物だから、触れることはない。
触れたらいいのに、と頭の悪いことを思ったそのときだった。
「うお、なんだコリャ」
ダイニングのドアが開いて、サンジが今まで連想していた人物が現れる。
振り返ってみると、きょろきょろと野生動物のように警戒しながら部屋の中を見回すゾロの姿。
ゾロは昼間のプラネタリウムを見逃していた。いつものように惰眠を貪っていて、起きたのはもうじき夕飯という時間。
「室内プラネタリウムだと」
伸ばしていた手を引っ込めながら言った。
「ぷらねたりうむ?なんじゃそりゃ」
言いつつ、警戒を解いて頭上を見上げつつダイニングに踏み込んでくる。
すげェもんだな、とか言いつつ星に目を奪われる隣に並んだその姿をサンジは見つめた。
「あ」
と突然ゾロが声を上げた。
「なんだ?」
「これ、お前に似てる」
言いながらゾロが指差す先を見る。そこにあったのは、地球のすぐ横で黄金に光る星。
この、地球のすぐ横にあるのが月。
万有引力の作用によって、地球の周りをずっと自転しているのよ。
そうね、まるで、恋人を見守るみたいに。
珍しくそんなロマンチックなことを言ったのはロビンだった。
「・・・じゃあ、これがお前な」
そう言って地球を指差した。
お前がもし許すなら、おれはお前をずっと見守っていられるような、そんな場所にいたい。
そんなことを考えているのをお前は知らないだろうけど。
するとゾロは笑って言った。
「お前が近くにいるなら、こんな広ェとこでも退屈しねェだろうな」
その言葉に顔を上げてゾロを見ると、こちらを見下ろしていた。
瞼を下ろしてみたら、少しして唇に熱いものが触れる。
目を閉じた暗闇の中で、青く光る星の残像が見えた。
(11/01/16)
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