捧げ物・宝物
□アイシテル(ずっと!)
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Side.S
「土方ァァァァ!!」
「うるせェ授業しろやァァァァ!!」
そんな会話も日常になった、銀魂高校三年の僕らです。
今日は『教室戻れ!』と言われない為なのか何なのか、土方先生が引きずられて来た。…「教室に戻らせろ!」なんて叫ばれているんだから一緒だと思うんだけど。
銀八先生と土方先生が付き合い始めたのは去年。
それから一年も経ったというのに銀八先生は相変わらず授業そっちのけで土方先生中毒だし、土方先生も結局許しちゃうから全然進歩しない。そろそろきつくお灸を据えて欲しいと切実に思うこともしばしばある。
どうしてクビにならないのかはなはだ疑問で仕方ないのだけれど、要領だけは無駄にいいから校長先生も教頭先生も言い含められて終わりなのだ。
まぁ確かに、別に嫌いな先生ではないのだけれど―――
「生徒が待ってますよ坂田センセー」
「土方がいれば俺はそれでいい」
「オイ志村ツッコめ」
「土方先生無茶振りするのやめてください!そして銀八先生は授業してください!」
「つまり続けていいと」
「今の言葉のどこにその要素が!?」
―――たまに、というより九十九パーセント会話が成立しなくなるのが問題だ。
多分校長先生も教頭先生も、この会話に負けたのだろう。普段は自己中で面倒な二人だけれど、流石にこれには同情する。
ちなみに理事長はといえば、「実績は残してるしねェ…」とかなんだかんだで銀八先生を追い出そうとしない。クビにならないのは、これも関係しているのだろう。
それに多分だけれど―――このクラスのみんなも、銀八先生がクビになるとなったら反対するだろうと思う。勿論僕も含んで。
要するに、何故だか誰からも愛される人なのだ。銀八先生は。
それが羨ましいような、やっぱりそうでもないような。
なんとない複雑な気分に襲われて、僕は軽く溜息を吐いた。
「とにかくっ、ちゃんと授業を―――ってアレ?」
思考の海から浮上して声をかけた先、そこに居たはずの二人の姿が見えない。
慌てて辺りを見渡せば、ちらりと僕の方を見た神楽ちゃんが口を開いた。
「あのホモップルなら『自習!』って言って出て行ったアル」
「…誰か引きとめようよ」
そんな事をする人が誰もいないことは分かりつつ、溜息交じりにそう呟いて。
「…転校しよう」
お決まりになったセリフを口にした。