銀時×土方
□心を、きみに
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銀八と土方は、所謂恋人だった。
教師と生徒ではあったけれど、それも気にならないくらい銀八は土方が好きだったし、土方もそんな銀八の様子を見てだんだんと気にしなくなっていた。
くだらない事で笑い合って、愛していると呟いて。
同性という事なんて気にならないくらい、二人は普通に、幸せな恋人だったのだ。
当たり前のように巡る毎日の幸せを噛み締めながら、優しい光に満ちた日々を送っていた。
―――そうして、あの卒業の日。
その年は春が来るのが遅くて、まだ蕾のままの桜は散りもせず、ただもの寂しい雰囲気を助長するのに終わった。
そんな桜の下で銀八に向き合って、土方はきっぱりと告げたのだ。
『大学卒業したら、今度は俺から逢いに行く』
だから、それまで待っていて。
そう言った土方は、少しだけ寂しそうに、けれどいつもの大人びた表情で笑っていた。
予想もしなかった言葉に、銀八の心臓がどくりと大きな音を立てる。
ひゅ、と肺が掠れた音を立てて、ようやく銀八は口を開いた。
『……分かっ、た』
土方には土方の人生があるから。
きっと何も、変わらないから。
自分を何度も誤魔化してぎこちなく微笑めば、土方もまた笑った。
けれどその彼の笑顔が、あまりに綺麗で―――切なかった、から。
だから子供のようにすがりついて、そんなの嫌だと言いたいのを堪えて。
またな。
またね。
銀八はそんな短い言葉で、長い時間を待とうと決意したのだ。
四年間という時間がとても長いのは分かっていたけれど、自分の気持ちが変わらないという自信はあったし、土方もきっとそうだと信じていた。
いざとなったら―――きっと彼には怒られるだろうけれど―――逢いに行ってしまえばいいのだ。
そんな風に、気楽に考えていた、のだけれど。
たった一言呟いたこの一言が、あんなにも大きな後悔と絶望を生むなんて。
この時の銀八は、欠片も気づいてはいなかったのだ。