捧げ物・宝物
□Because I love you!
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『なぁ土方、明日非番だろ?』
「ああ」
『じゃあさ、デート行かねぇ?久しぶりにさ』
「…明日?」
『うん。旅行とかは無理でも、映画とか遊園地とかなら行けんだろ?』
「そりゃあ…まぁ」
『よっしゃ、じゃあ決まりな!』
「あ、でも銀時、」
『大丈夫だって!場所なら俺が決めるし、金だってちゃんとあるし』
「そういうことじゃなくて…」
『ん?』
「……」
『…土方?』
「…いや、何でもねェ。気にすんな」
『? そう?』
「ああ。…じゃあ、明日な」
『うん。また明日』
電話越しにそんな会話をした、十二時間後。
―――あー…ヤバい、かも。
ぐらりと揺れた世界に、土方は内心で呟く。
最近、仕事で徹夜続きだったのがいけなかったのだろうか。寝不足かもしれない、と土方は小さく溜息を吐いた。
本当は、今にも眠ってしまいそうなのだ。
出かける間際、山崎に『クマだけでも隠して行ってください!見た目不健康すぎます!』と言われた程度には。
けれど、電話越しにあの嬉しそうな声を聞いてしまったから。
ちょっとくらいなら無茶してもいい、そんな気になってしまったのだ。
遠くから、ばたばたと足音が聞こえる。
時刻は十時を少し回ったところ。
「土方お待たせ!! 悪ィ遅れた!」
銀時は焦ったような、それでいて嬉しそうな表情で駆けてくる。
土方は思わず小さく笑って、ベンチから立ち上がった。
―――今日は何も起きないようにと願いながら。
Because I love you!