捧げ物・宝物

□アイシテル(ずっと!)
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Side.T



空に白い煙が昇る。
雲ひとつない空に混じったそれはやけによく映えていて、いつまでも見ていたい、なんて柄にもない事を考えた。
けれどそれもあっという間に青に溶けて。

「…アホらしい」

クツクツと喉を鳴らして笑えば、ようやくいつもの自分に戻ったような気がした。

遠くの方から、十二時を告げる音楽が流れる。
確かきちんと授業に出ていれば、今は銀八の国語のはずだ。
とはいえどうせ銀八が授業をするとは思えないから『バタンッ』「ちょ、テメ離しやがれ!」「離しませんー」別に授業に出なくていいだろうことが今確定した。

軽く溜息を吐いて煙草を揉み消す。
それを屋上の柵の外へと投げ捨てて、給水塔の陰へと身を隠した。
別に見つかったって構わないけれど、男二人がイチャつくのを見ていて楽しいとかいう特殊な思考は持っていない。
まぁ確かに土方の顔はいいほうだと思うが、そういう対象にしたいかと問われればそんなことは―――あるな。あるよ。ある。
かといって奪い取るとかいう思考には行き着かないし、この場を去るのも癪で、とりあえず二人がさっさと居なくなってくれるよう祈ることにした。

見上げた空は、嫌になる程青い。
紫煙の混じらない息をゆっくりと吐き出して


「土方ぁ〜」
「ウゼェ寄んな」
「そんなこと言って。嬉しいくせに」
「ッ、誰が!」
「まぁいいからいいから」
「何もよくねェんだけど!? つーか寄んな触んな」


吐き出


「俺が近づいて触りたいので無理です」
「何こいつウゼェ!」
「ほらじっとして」
「ちょ、」
「……」
「…っ、ん」


吐き


「……っは、長ェよ馬鹿」
「えー、もうちょっと」
「授業があんだろうが」
「別にいいんじゃね?一時間くらい」
「…不良教師」
「お互い様」


吐く。吐き気がする。
人前だという意識は無いんだろうが、よくもまぁ昼間っからこんなにイチャつけるものだと不本意ながらいっそ感心した。尊敬なんて欠片もしないけれど。
はぁ、と溜息を吐いて目を閉じても、一切眠れる気がしない。迷惑防止条例とかで訴えたら勝てる気がする。

尚もイチャついている二人を完全に感覚から消すように努めながら、しぶしぶ目を開けた俺は携帯電話を取り出した。
そうしてアドレス帳から名前を探して、




「…あ、もしもし俺だ。今すぐ屋上来い屋上。三年全員呼べ」




こういう事が最も得意そうなドS少年に、そう伝えたのだった。








Fin
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