捧げ物・宝物

□とある休日の物語
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とある雨の日。
どんよりとした空の下、万事屋にもどんよりとした空気が流れていた。




とある休日の物語




「銀ちゃん、ひもじいアル」
「不景気だからな」
「銀さん、仕事がないです」
「不景気だからな」

こんな暗い会話をする三人の目は、もう大分別世界を見つめている。
部屋は電気が止められている為薄暗く、食材が何一つ入っていない冷蔵庫は開け放たれている。
かろうじて水は止められていないものの、水道料金が払えないので限界まで水は使わないのが約束になっていた。

ちなみに、前回の依頼が来たのが三ヶ月前。それ以降はほんの些細な依頼さえも入っていない。要するに、収入ゼロだ。
仕事を探そうにも、この不景気では雇ってくれるところもない。
頼みの綱だった新八は、姉である妙から「収入があるまで帰ってくるな」とのお達しを受けたらしい。
お登勢に頼もうかとも考えたけれど、「家賃返せ」と言われるのがオチなので誰も行こうとはしない。

思うところは皆同じだったのか、はぁ、と三人の溜め息が重なった。

と、その時。

「…足音。足音がするネ!」
「え?僕には聞こえないよ。幻聴じゃない?」
「とうとう幻聴まで…。神楽、短い人生だったな」
「違うヨ!本当に聞こえるアル!!」

神楽が勢いよく主張したとき、万事屋の安っぽいチャイムの音が響いた。
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