捧げ物・宝物

□それは銀色の
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銀時と二人、ぼんやりと窓の外を眺める。
次第に積もっていく雪を眺めながら、銀時は土方の顔を覗き込んで、でも、と呟いた。


「土方ほどじゃないよ」


土方に向けてくる笑顔が、輝きすぎていてイタい。

ていうか何コレ。
冗談にしては表情が真剣なんだけど、本気で言ってるわけじゃないよね。
そこまで馬鹿じゃないよね俺の幼馴染。

「…あの、やめてくんないその表情。傷つくから。流石に傷つくから」
「いや、お前のセリフの所為だろ」
「だってホントじゃん」
「……」
「だからそのカオやめろよォォォ!!」

銀時の絶叫が響く中、土方は溜息を吐いてコーヒーを開けた。

正直ここまで幼馴染が駄目なやつだとは思わなかった。
いや、駄目人間なのは元からだけど。
それでももう少しマトモだと思っていたのに。

「…ここまで堕ちたか」
「いや心の声出ちゃってるから。せめて口に出さないでおこう?流石に銀さん泣いちゃう」
「お前の所為だろ」
「ああ分かったよ流石に自分でもアレはないなって思ったよ!」

逆切れをした銀時が、器用に膝に頭を埋める。
拗ね方が昔と少しも変わっていなくて、土方は思わず噴き出した。

くつくつと小さく笑いながら、土方が銀時の髪に手を伸ばす。
わしゃわしゃとかき混ぜた髪はふわふわで、黒っぽい制服に銀髪がよく映えていた。

「…ストレートな土方クンには、俺の気持ちなんか一生分かりませんよー」

拗ねたように呟く銀時が言っているのは、持ち前の天然パーマのことだろうか。
床屋にすら見放されたそれは、今もくるくるとした感触を土方の手に伝えてくる。
その柔らかさに目を細めて、土方は小さく口を開いた。

「俺は別に、天パも嫌いじゃないけどな」
「へ?まじで!?」

勢いよく顔を上げた銀時の表情がやけに嬉しそうで、土方はこみ上げてくる笑いをかみ殺して頷いた。

土方の手の中で遊ばれている銀時の髪は、この歳の男子生徒と比べれば大分柔らかい。
この感触が、幼い頃から土方は好きだった。

「雪みてェ」

小さく笑いながら言えば、銀時はしばらく黙った後にうーんと唸ったような声を出す。
どうしたのかとその顔を覗き込めば、銀時は非常に複雑そうな表情をしていた。

「…銀時?」
「…いや、嬉しいんだよ?嬉しいんだけどさ、その表情がクるっつーか主に俺の理性的な物がっていうかどうしてこの子はこう…」

銀時はしばらく一人ぶつぶつと呟いたあと、はぁ、と重々しく溜息を吐いた。
…本当に意味が分からない。

「お前さっきから何言って、っ」


文句を言おうと開きかけた唇。



そこにほんの一瞬、男のそれが触れて。



「……馬鹿じゃねーの」
「馬鹿かも」

でもいいや、と銀時は笑った。
昔と何も変わらない、悪戯っ子じみた笑顔。
呆れかえっても喧嘩をしても、こうして笑われてしまえばいつだって土方は許してしまうしかなくて。


「…みんな大馬鹿だ」


もう一度交わされた、触れるだけのキス。


「…土方?」
「寒いから」


雪が降るほど寒い日だから。



温もりと共に、愛を交わそう。









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