捧げ物・宝物
□ハロウィンって公の場でコスプレするいい機会
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プロローグ 土方十四郎の憂鬱
朝起きたら、猫耳と尻尾が生えていた。
「…………………えー」
ひじかたはこんらんしている!
―――イヤそんな事言ってる場合じゃない。
普段には有り得ない状況すぎて、この状況が飲み込めない。
だって何これ。趣味?俺の?
あ、そうかネコミミ愛しすぎて自分で着けちゃったぜ〜的な?
そうかなるほど。一応トッシーっていう第二人格を生み出したぐらいだしな。実はそっち方面にも興味あるのかもしれない。人の深層心理なんて自分にも分からないからね。なんたって「深層」だから。ディープな部分だから。
「……いや、ねェよ」
無理やり自分を納得させようとしたけど無理だった。いくら何でも流石にそれはないわ。
なに無意識でコスプレって。完全に頭のおかしい人じゃん。
俺は違うから。そういうのじゃないから。実際トッシーだって克服したからね。元々俺の人格じゃないし。
あ、でも今ネコミミ生えてんじゃん。
チチチ、と小鳥が囀るのが聞こえて、呆然としていた俺ははっと我に返った。
―――一体、何が起きたのだろう。
眠気の吹っ飛んだ、その割に混乱している頭で状況を整理する。
昨日は確か、そう、一日中書類整理に追われていた。総悟も絡んでこなかったし、特におかしな物を口にした覚えもない。
夜中の二時頃にはそれが終わって、いつものように布団を敷いて寝た。
それから四時間後、起きたらネコミミと尻尾が生えていた。
あれ、おかしい。
状況が一切変わらない。
「…いや、ここはポジティブに考えろ俺」
そうだ、ゴリ…近藤さんから学んだじゃないか十四郎。追いつめられた時こそネガティブになってはいけない。発想の転換だ。
例えば、ネコミミも尻尾も黒だからイメージカラー的には問題ないとか。知らない間に着流しが尻尾仕様になって穴が開いてるから捲れなくて済むとか。
うん、そう考えればそう悪い状況でもない。かもしれない。
すべての状況をポジティブに捉えて活用すれば、活路がきっと―――…
「開けるわけねェェェェ!!」
十月三十一日、朝。
絶叫が、屯所中に響き渡った。