長編

□恋
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土方が拾われた日から、半月ほど経った。

もう大分ここでの生活の仕方も分かって、むしろ家事をするのは土方の仕事になっていた。


「おーい大串君、手拭いどこ?」
「そこの引き出しの中」
「土方、今日の晩飯は?」
「鮭とほうれん草の炒め物」
「さすが大串君」

最初の頃は料理なんて出来なくて銀時に教わったりもしたけれど、今はもう土方が一番上手く料理を作るようになっていた。高杉にいたっては、料理ができるのかも不明だが。
因みに銀時に「マヨネーズ!?なんで!?お願いだからやめて!」と懇願されたので、マヨは自分の分にだけ掛けることになっている。

「甘いもんとか無い?」
「そんな金あんのか?」
「ありません」

いつも通りの馬鹿らしい会話。
料理の手を止めずに会話をしていたのだけれど、不意に高杉が呟いた。

「…土方、顔赤くねェか?」
「え?」
「あ、ほんとだ」

銀時がひょいと顔を覗き込んでくる。

「ほんとに顔赤い。熱あるんじゃない?」
「ねェよ」
「これでも心配してんだからさー、そういう風に言わない」

す、と伸びてきた手が土方の額に触れる。
銀時の手は思うよりひんやりとしていて、気持ちいいかも、なんて思った次の瞬間。

銀時の笑顔が凍りついた。



「………大串君めちゃくちゃ熱あるよこれ」



「へ?」
「高杉布団用意して」
「了解」

いつかのように抱え上げられる。
大丈夫だと言おうとしたけれど、抱え上げられた途端体がいつもより重いことに気がついて。


「もうちょっと自分の健康気をつけてよ?」


はぁ、と聞こえた軽い溜息がむかついたから、返事はしてやらないことにした。
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