長編

□苦
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二人と別れ家を出た土方は、行く当てもなく彷徨って――もとい、迷っていた。


近藤にはいつでも遊びに来いと言われたけれど、あんなに迷惑をかけたのだ。今更行くわけにもいかない。
というか、あんなことを言って去った手前帰るのは物凄く恥ずかしい。
そう思って歩いていたら、もうここはどこだか分からなくて。

どうしようかと辺りを見回せば、あたり一面木ばかりになっていて。

「…やべ」

木の根元に座り込む。
もともと荷物なんて持っていなかった土方は、高杉たちが持って行かなかった僅かな食料しか持っていない。
迷ったことで余計に気力も削がれ、もう歩く気も起きなかった。

「どうしたもんかな…」

はぁ、と溜息を吐く。
丁度その時だった。




「…お前、あの時の」
「あ」




土方の眼前に現れたのは、会わないようにと努めていた人だった。
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