長編
□い
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あいしていたよ、誰よりも
第一幕 (かつて愛した彼の名は、)
先生、と呼ばれることにはまだ慣れない。
けれどまぁ、当初よりはずいぶん落ち着いてきたものだろう、とは思う。
当初は何をしたらいいのかなんて分からないし、持ち前の適当さで何とか切り抜けてきたりもした。けれど今は、言われなくたってできることは多くあるし、自己愛精神とは言わないけれど、そろそろ自分を褒めたっていいんじゃないか、なんて位にはなっているのだ。
「おいテメェらーホームルーム始めっぞー」
いつも通り、自分ながら覇気の無い声。
まぁ、これが自分の「当たり前」なのだからこれはこれでいいのだろう。そう結論付けて、ぱんぱんと軽く手を叩いた。
「いつまでも喋ってっといい加減キレるぞコノヤロー」
別にキレる気は無い。というか、正直キレるのすらめんどい。
けれど、このクラスの生徒たちはそんな銀八のことをそれなりに理解し、慕ってくれているのだろう。そこは感謝したいところだ。
ようやく静まった教室、ホームルームといったって別に何をするわけじゃない。出欠を取って、手短に連絡をして、それで終わり。
「んじゃーちゃんと授業受けろよー」
『はーい』
それだけ言って、教室を出た。
……ああ、そういえば彼は今日も居なかった。