CP無/OTHER
□小さな世界を
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そんな日々を幾度繰り返したことだろう。
言葉だけだった憎悪は、いつしか暴力へと変わった。
憎々しげに揺れる蒼い眸。
アンタの所為でと繰り返す荒れた唇。
彼女の精神は日に日に不安定になっていて、時には痣や火傷になるような傷を与えられることさえあった。
土方が泣けば煩いと殴られ、必死で涙を堪えれば反抗的だと蹴りつけられる。
出来得る限り彼女の気に障らないようにと気をつけるのだけれど、それでもほんの些細なきっかけで彼女は狂い責め立てるのだ。
忘れられない彼の姿。
幸せな思い出は美化される。
次第に増えていく酒の量。
けれどそれでも、土方はそこから離れることはしなかった。離れたいとも思わなかった。
だって幾ら傷つこうと、涙が溢れ出そうと。
この小さな箱庭で、彼女に笑って欲しかったから。
「ごめんなさい」
だからただそれだけの言葉を、何度でも土方は繰り返す。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
生まれてきてごめんなさい。
貴女の前にいてごめんなさい。
幾ら謝ったところで、彼女の気が収まらない事は知っていた。
土方がいなくならない限り―――否、きっといなくなっても、彼女に救いなどないのだ。きっとそんな事彼女も分かっているだろう。
それでも責めずにはいられないほど、彼女は一途に純粋に彼だけを愛していた。
伝わらない愛。
手に入らない愛。
それを思うたび、心はきしきしと啼くけれど。
(…ねぇ、それでも)
本当はずっと、愛して欲しかったんだよ。