CP無/OTHER
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子供の頃、天使に恋をした。
可愛らしくて純粋で、いつも隣で笑っていた小さなあの子。
あれから時は随分と経って、きっと天使は人間になったし、目の前の彼は自分のことなんて忘れているだろう。
けれど、それでも。
「好きです」
今でも俺は、その天使に恋をしている。
***
痛いくらいに、泣きそうに。
ずっとひとりだと思っていた。
子供の頃からずっと疎まれて、厭われて生きてきた。
だから誰にも頼らなかった。誰より優しいあの人にさえ、本音は見せなかった。見せられなかった。
なのに、
「…土方は、強いよ」
微笑った声に、泣きそうだった。
***
「ただ、お前に好きだよって言ってほしかっただけなんだ」
そう言って、銀色の男はぼろぼろと涙を零した。
好きなんだ、好きだよ、好きなのに、こんなに好きなのに。
繰り返して繰り返して、彼は泣く。
「ねぇ、好きだって言ってよ、俺はこんなにすき、なのに」
永遠の眠りの前で、泣く。
***
死ぬのだろうと淡々と思った。
甦るのは、身に余るほどの幸福と少しの後悔。
くるくると廻るなんでもない記憶の中で、けれど君だけが見付けられなかった。
震える息を、呆れたように吐く。
「…最後くらい、空気読めよ馬鹿」
嗚呼、走馬灯にすら出てきてくれない。
***
「土方君が一番好きなのは何ですか!」
「マヨ」
「…一番大切なのは?」
「真選組」
「……一番欠かせないものは?」
「煙草」
「………いざというときに一番守ってくれそうなのは?」
「マヨリーン」
「…………一番愛してるのは?」
「お前」
「!」
***
「なぁ、別れよっか」
声は淡々と響いて、けれど視線は僅かだけ泳いでいた。
嘘に慣れた目はそれが彼の虚言だと告げていたけれど、手を伸ばすには少し何かが足りなくて。
「…そうだな」
嗚呼、嘘に慣れた自分の嘘は、きっと真実に成り代わるのに。