銀時×土方

□夏空ロマン
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蝉が鳴いている。
五月蝿い、が、こんな夏の雰囲気も風流だろう。なんて親父くさいことを考える。

しばらくぼうっと歩いていると、愛しの恋人の姿を見かけた。
巡回中だろうか、今日は珍しくジミー君と一緒だ。

「副長、今日はどこ行きますか?」
「あー…。どうでもいいわ」
「はぁ!? ちょ、アンタそれでも副長!?」
「ダリーんだよ眠みーんだよ勝手にやれや」
「副長ぉぉぉぉ!!」

うん、相変わらずフリーダムな子だ。
特にジミー君に対してはそれが顕著な気がするのは、決して気のせいではないだろう。
…俺に対しても酷いものだけれど。
ちなみに、普通の隊士達に対しては『鬼の副長』を貫き通しているんだから、俺達はある意味信頼されているのかもしれない。いや、されているんだろう。されてる。っていうか、そう思っておかないともうやりきれない。

仕事をジミー君に丸投げした土方は、煙草を咥えながら(ちなみにここは歩き煙草禁止だ)俺の方へと向かってくる。
にこやかな笑顔に悪寒を感じ、逃げようと思ったときにはもう遅く。

「おう、銀時」
「…よぉ」
「? どうした?元気ないぞ?」
「へ?イヤイヤ全然大丈夫」
「そうか」

あれ、意外と今日はふつ

「あのな銀時、スキーしたい」
「期待した俺が馬鹿だったァァァ!!」
「安心しろ。お前は初めから馬鹿だ」

いけしゃあしゃあと答える土方が、今はほんとウザい。
なんで俺こんな奴と付き合ってるんだろう。そう思ったら本気で泣きたくなった。

というか、何故スキー。
今は夏ですよ。日差しとかガンガンな夏ですよ。スキーが出来ない事ぐらい子供でも分かるじゃねェか。あ、そうだよコイツ子供以下だった!

「なぁ、スキー行こうぜ」
「…あのさ土方、今の季節は?」
「は?夏に決まってんだろ馬鹿じゃねーの」

お前のほうが馬鹿じゃねェか!!

が、今はそんな事置いておいて、とりあえず話を続ける。

「で、スキーする季節は?」
「冬」
「で、どうしてスキー行こうになるのかな?」
「行きたいから」

あぁ、やっぱり馬鹿だ。
どうしたものかと頭を抱える俺に、土方はわくわくとした表情で話しかけてくる。

「な、行こう?」

キラキラとした眸に、思わずときめいた俺はどうしたらいいのだろう。
ただ、いくら愛があろうとも季節は変えられないわけで。

「無理だろ」
「無理じゃねェって」
「イヤイヤイヤイヤ、無理だから」
「イヤイヤイヤイヤ、いけるってお前なら」
「それが出来るなら今頃俺は売れっ子スターだよ?」
「無理だろルックス的に」
「んだとぉ!?」

なんでコイツはこうなんだ。人を思いやる心とか持ってないのか。持ってないよね。持ってたらこんなこと言わないもの。
はぁ、とわざとらしく溜息を吐いてやったら、土方もはぁと重々しい溜息を吐いた。

「お前は…努力ってもんを知らねェのか」
「お前に言われたくねェしな!!」

俺のささやかな抵抗も虚しく、ずるずると俺はどこかへ引っ張られていく。
遠くでジミー君が俺に向かって手を合わせていた。…いや、助けてよ。

後ろも振り向かず、仕事中という事実さえ差し置いてずんずんと進んでいく土方に、俺は恐る恐る訊ねた。

「…土方さん、どこへ行くんデスカ」
「スキーですよ坂田さん」
「助けて誰かァァァ!!」



ねぇ、この子ホントどうしたら良い?


泣きそうになりながら、無事に帰ってこられることだけを願った。







Fin



+++

この後行くのは雪山とか

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