銀時×土方

□水溜りを泳ぐ雲
2ページ/2ページ


弐 愛する人編





子供達手作りのバースデーパーティーも終了し、銀時は土手へと来ていた。
二人は、これから来るであろう彼に気を遣ったのだろう。新八の家へと向かったから、家にいても意味はない。
赤く熟れた太陽を眺めながら、愛しい彼を想った。

今日、土方は仕事らしい。
普段からして忙しい奴だから、何となく分かってはいたのだ。勿論期待しなかったと言えば嘘になるけれど。

「…今日中には行く、か」

先程電話で聞いた言葉を反芻して、口元に笑みを乗せた。
今までもこれからも、俺と仕事とどっちが大事なんだ、なんて言うつもりは毛頭無い。
きっと、彼はどちらとも比べられないのだ。
同率というより、別次元。
だから、どちらも同時に必死でこなして、出来るのが当たり前。出来なかったら自分の責任。
誰もそんな事思ってやいないのに、彼はそうして無意識に自分を追い詰めるのだ。
―――そんな不器用な彼を愛したのは自分で、その銀時を愛してくれたのは土方で。

依存してるなぁ、なんて思って笑った。




…―――いつの間にか、眠ってしまったようだった。
とさり、とすぐ横から聞こえてきた音に意識が浮上する。
けれどどうしてか、目を開くまでには至らないのだ。
水中で揺蕩っているような感覚。上も下も分からない、あたたかな闇。
微睡みの中で、誰かの手がそっと銀時の髪に触れた。
感触を確かめるようなその手付きは、記憶の中の先生を思い出させる。

「――――」

誰かが何か、言ったようだった。
揺れてたわむ頭では、聞き取ることは出来なかったけれど。

ただひとつ感じたのは、


―――微かに触れた、唇。


一瞬で離れていった感触に、微睡みから抜け出し重い瞼を持ち上げる。
熟れ落ちた太陽はもう此処には無く、代わりにあるのはほの白い月。
微かな光が照らした彼の頬は、うす赤く染まっていた。



誕生日、おめでとう



起き上がって二度目のキス、を。






水溜りを泳ぐ雲
空を浮かぶうちは、言えないから。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ