銀時×土方

□心を、きみに
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彼からの最初の便りが来たのは、それからたった一年後のことだった。





『坂田銀八 様

 久しぶりだな。元気にしてたか?
 俺は、ようやく後輩も出来て、大学生活を楽しんでるよ。
 お前はまだ、ちゃんと先生やってる?
 馬鹿な事ばっかりやって、生徒に愛想つかされんなよ。
 じゃあ、またな。

   土方十四郎』





たったそれだけの短い手紙は、けれど確かな質量を伴って銀時の手に渡った。
変わらない彼の字は、整っている中にも優しさが滲んでいる。

「土方…」

律儀に約束を守る彼らしいと思った。
大学を卒業してから逢いに行くと言った手前、どうしたって今は会えなかったのだろう。
自分の顔が、にやついているのが分かる。
―――未だに自分を想ってくれているという事が、酷く嬉しかった。
きっとこれを土方が見たら、間抜け面してんな、と軽く頭を叩いてきたに違いない。
それがありありと想像できてしまって、銀八はくすりと小さく笑った。


銀八はひとつ息を吐くと、部屋の中を漁り始める。
六畳一間の狭いアパートだ。そう探す場所も無いはずだというのに、どうしてか目標の物は見つからない。

「…っかしいなぁ」

ぶつぶつと呟きながら、それでも探す手は休めない。
引き出しを開け、押入れからダンボールを引っ張り出して。部屋が埃まみれになるのも構わずに、銀八は求めるものを探し続ける。


そうして、五分後。

「お、ようやくはっけ〜ん!」

達成感と共に振り上げるのは、便箋と封筒。
部屋は泥棒に荒らされたかのような惨状となっているけれど、銀八はそれを気にした様子も無い。
がさがさと物を掻き分けて、銀八は卓袱台の前に座る。
自然と浮かんでくる笑みをそのままに、かちんと音を立ててキャップを外し、白い便箋に愛しい彼の名を乗せた。


『土方十四郎 様』


彼の名前に『様』を付けるのは、ほんの少し恥ずかしいような気がした。
照れたように苦笑しつつ、ラインだけだった紙を文字で埋めてゆく。
さらさらと言葉が綴れるのは、きっと想いが溢れているからなのだろう。

「……」

きしきしと、愛しさに心が啼いている。
今すぐ逢いに行ってしまいたかった。
抱きしめて、キスをして。
愛しているよと伝えたら、君は何て言うだろう。

「…すきだよ」

ねぇ、拙い言葉で、君に心を綴るから。


―――君に伝わればいいと、願うよ。





『土方十四郎 様
 
 ホントに久しぶり。お前こそ、元気?
 俺は相変わらずかな。
 土方も、大学生活が楽しそうで何よりだ。
 でも、逢えないのはやっぱり寂しい。
 分かってたけど、四年って長いなー。
 ちゃんと先生やって待ってるから、土方は心配すんなよ。

 本当に本気で、愛してる。
 じゃあ、またね。
 
   坂田銀八』








to be continued... 
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