銀時×土方

□黒曜の羊
1ページ/2ページ


あの人の首に包帯が巻かれ始めたのは、一体いつ頃だったろう。
白い肌に白い布は酷く映えて、そして酷く痛々しかった。
視界に彼の首筋がちらちらと映る度、ずきりとこちらの胸すら痛む。
きっとそれは皆同じだったのだろう。いつしか隊士達は彼を極力見ないようにしたし、彼も極力人目を避けるようになった。

仕方のないことだったのだろう。誰も傷付かない唯一の方法だったのだろう。
けれどそれは、彼を更に追い詰めることにしかならなくて。


「土方さん」


話しかければ、彼はいつも静かに振り返った。
嫌そうにしかめられていたはずの表情は、いつしか泣きそうな微笑に変わっていたけれど。

「どうした」
「今日もあの人の所ですかィ」
「…そうだよ」

ああ、ほら、またその表情だ。
やめろと今日こそ言いたかったのに。
無くなったら死んでしまうんだと言うかのような、そんな顔。

真っ白い包帯が目に痛くて、心臓が引きちぎられそうで。
何と言えば彼が自分を見てくれるのか分からなかった。きっと正解なんてなかったのだ。
彼が見ているのは、どんなに苦しくても愛しているのは、あの男だけだから。

強く噛み締めた唇は、血の味がした。
悔しくて苦しくて、吐く息が、握る拳が、震える。

「…アンタは知らねェかもしれやせんけど、俺は、」

声が震える。
頭の中は熔岩のようにぐらぐらと煮立っていて、あらゆる色が視界を泳いだ。

そうして彼は、柔らかく笑う。
愛しいものを眺めるように。
懐かしいものを手に取るように。




「知ってる」




少し、泣きそうだった。


【すきだとつげることさえ】
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ