高杉×土方

□寂寥人形
1ページ/2ページ


誰か、絶望から僕を助け出して。





蝕むものは消えゆく世界





大通りに面した広場。

そこに集まる、沢山の人。

殺せ、と誰かが叫んだ。

殺せ、と誰かも言った。

殺せ、と誰もが叫んだ。

やめて、と僕は呟いた。



処刑が執り行われるのは、午後三時。

処刑されるのは、この国の王。

誰もを苦しめた王。

誰もが苦しんだ王。

…嗚呼、なんだ、死んで当然じゃないか。

苦しい生活から、先の見えない不安から。

これでやっと、解放されるのだから。



―――ねぇ、なら、どうして?



どうしてこんなに、涙が零れるの。




ゴォォン




一度目の鐘が鳴る。




ゴォォン




二度目の鐘が鳴る。




ゴォォン




終わりを告げる鐘が鳴って、


処刑台の上にいる彼が、ふいにこちらを見た。
遠目にも笑っていると分かる彼は、何故だかとても嬉しそうで。



『あいしてたよ』



声は、届かなかった。




―――ずっとずっと、世界の終わりを願っていたんだ。

どこにも行けない箱庭を壊して、君と二人で笑って生きられる未来、を。

ただ、それだけを。




振り上げられた刀は、僅かの躊躇さえなく。




彼の首元目掛けて、振り下ろされた。



 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ