高杉×土方
□寂寥人形
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あの日から数年後。
一人の青年が、森を訪れた。
かつて起きた革命のたった一年後、この国は滅びた。
かろうじて秩序を保っていた王政が崩れ、代わった革命軍の隙だらけの政治は結局、他国からの攻撃から身を守るほどの力は有さなかったのだ。
その失敗の代償は、あまりにも大きかった。
多くの者が死んだ。
多くの物を失った。
そして、
「…晋助」
もはや名前を変えたこの国の一角、広大な森の片隅にひっそりとそれはあった。
青年が立つ目の前には、明らかに不恰好な十字架。
その下に眠るのは、世界で一番愛した人を守った彼の亡骸。
「この国も、変わったな」
自嘲するように、青年は言う。
荒れ果てていた自然は元に戻り、商業も大きく発展した。
ただ、昔からここにいた住人のほとんどは姿を消してしまったけれど。
王のいた城は崩された。
革命軍の立てた政府も呆気なく終わった。
だとしたら、あれは。
「…一体何の為、だったんだろうな?」
ただ奪われただけだった。
得たものなんてどこにもない。
ただ、全てを終わらせただけの革命。
今更何を思ったってどうしようもないとは思えど、それでも思考はあの時から何も変わりやしないのだ。
分かってるはずなのにな、と青年は微笑う。
けれど、もし。
もしあの時、革命さえ起こらなければ。
「みんな笑ってたのかも、な」
二人だけでなく、この国に住んでいた人たち全てが。
不安に怯えることもなく笑える日が、訪れていたのだろうか。
もしも今ここに彼がいたのなら、『そうかもな』なんて笑ってくれただろうか。
それとも、『ありえねェ』と仏頂面をするのだろうか。
どちらでもいいから、逢いたかった。
―――けれどそれは、叶わない願いだと知っている。
晋助の死からずっと祈り続けていたけれど、それは未だに叶えられていないのだから。
だから、
「…俺も、」
もう、祈るのは終わりにしようと決めていた。
そのために今日、ここを訪れたのだ。
最後の一言を、告げる。
「俺も、―――だったよ」
恐れるあまりに、言えなかった言葉。
伝えられなかった、一番大切な想い。
彼が、あの日のように笑った気がした。
Fin
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元ネタ*悪ノP『悪ノ召使』