近藤×土方
□ヒメゴト
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「お妙さぁぁぁぁん!!」
「近づくなこの変態ゴリラ!!」
いつものように殴られて帰ってきた近藤さんは、同じくいつものように笑顔だった。
怪我の手当てをしている間にも、近藤さんは楽しそうに話し続ける。
「いやぁ、今日のお妙さんは一段と綺麗だったなぁ!」
「フォームがか?」
「違ェよトシ!!怒った顔も美しいというか…」
「……」
こんな話を毎日聞かされて、うんざりしない方がおかしい、と思う。
しかも、それが想い人だったなら尚更だ。
「…いい加減諦めれば」
何度目になるか分からない事を呟いて、溜息をついた。どうせ、聞き入れてなんかくれないのだろうけれど。
案の定、近藤さんは子供のようにむくれた表情で、
「諦められるわけねぇだろ〜?」
なんて、少し嬉しそうに言った。
――ああ、この人のこの表情が嫌い。
本当に嬉しそうで、きっと頭の中にはあの女のことしかないのだ。
恋は片思いのほうが楽しいと聞いたことがある。
けれど、こんな救いようのない片思いで、一体何が楽しいって言うんだろう。
近藤さんが楽しそうな分だけ、俺は苦しくなる一方なのに。
「あー、いつか結婚できたらいいんだけどなぁ」
嬉しそうな表情に、溜息を一つ。
ああ、そんな想いが打ち砕かれてしまえばいいのに。
そんな事を願った。
Fin