近藤×土方

□君は笑う
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嗚呼、いつからだったろう?




いつもすぐ傍に感じていた距離は、いつからかほんの少しだけ離れてしまった。
きっと、好きな人ができたからだろう。
あの頃の俺達は、まるで家族だった。否、家族なんてものよりもずっと近くにあった。
アンタにそんな事を言ったら、今でも変わらないって言うんだろうけれど。
それでも、微かに遠いのだ。
あの頃は手を伸ばさなくても届いたものが、今では精一杯に手を伸ばしてようやく届く場所にある。


離れて、離れて、離れて、離れて、


いつか届かなくなってしまうんじゃないかって絶望を、きっとアンタは知らない。
いつだってあの女の事を追いかけては、殴られても怪我を負わされても幸せそうに帰ってくるのだ。

届かないものなんてないというように。
いつか叶うと、信じきって。

今だってそうだ。

殴られて帰ってきたアンタの表情は、この世界の誰より幸せなんじゃないかって言うくらいに輝いていて。


『今日のお妙さんも美しかった!』


そう言うアンタの言葉の一つ一つが、どれだけ俺に傷を与えているのかなんて知りもしないくせに。
それでもアンタは、幸せそうに笑うんだ。



(いっそ全部、壊れてしまえばいいのに)



世界の全部が、俺の全てが、壊れてしまえたなら。
アンタを苦しませることにさえ躊躇いを持たずに、この想いを伝えられるのかな。







君は笑う。

(僕の傷なんて気付かずに。)






 

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