山崎×土方
□君の夢を見る日
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『どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んで行こう』
幼い頃読んだ物語の中、守られなかった二人の約束。
けれどそう約束したあの少年達を、俺は本当に羨ましいと思ったんだ。
君の夢を見る日
初めから遠かった。
手の届かない人だなんて、手を伸ばしてはいけない人だなんて、本当はずっと分かっていたのだ。
だってそもそも、立っている場所が違う。
あの人はどこまでも真っ直ぐに澄んでいて、誰もの憧れで。
だというのに俺は真っ黒に淀んでいて、誰もを裏切っている。
全てが正反対。
交わってはいけない存在。
そのはず、だったのに。
「…愛してる、ね」
きっとそれは禁忌だった。
愛したところで、報われる事なんてないのに。
手に入るはずなんてない、のに。
それでも、どうしても手に入れたくて、その感情だけが己を支配するのだ。
『こんなしずかないいとこで僕はどうしてもっと愉快になれないだろう。どうしてこんなひとりさびしいのだろう』
宇宙を行く汽車の中、自分を置いて友人と話をする女の子に少年は嫉妬した。そうして、自分を見てくれない友人を恨んだ。
…―――嗚呼、きっと今の俺はそうなのだろう。
こんな優しくて暖かい世界の中、
土方さんの目に俺が映っていないことが、
土方さんの目に俺以外の誰かが映っていることが、
土方さんが俺に心を許してくれないことが、
土方さんが俺以外の誰かに心を許していることが、
辛くて悔しくて痛くて憎らしくて。
『真選組副長を暗殺し、撤収する事』
その指令が届いたのは、そんな時だった。