BL短編
□milk味のキス
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運命とは、時に残酷で、冷徹だ。それは誰もが生きている上で実感する、ごく当たり前のことなのだろう。けれども僕らは、大人であっても子供のように、運命を拒否しようともがく。子供たちも、大人達のように、運命から逃れようと暴れることもある。
どちらがどちらで、どちらがどちらであろうと構いなく、僕ら人間は素直に残酷な運命を受けとめられない。
それはいい事なのか悪い事なのか。その問いに答えはない。きっと全知全能の神であろうと、簡単には答える事は出来ないと思う。
僕の名前は仙道由貴(センドウユキ)。他人から見ればどうでもいい事ばかりを考えているらしい、四原学園の高等部二年。
屋上のフェンスにもたれて、空を見ていた僕は、朝食代わりの牛乳パックに刺したストローをくわえたまま、ただただ空を見ていた。
その行動は、今日に限らずいつもしていることで、もはや習慣となっているから、やめる気はさらさらない。それに
「由貴、またここにいたのか」
今日もまた、僕は彼に声をかけられて、自分の世界から現実の世界に引き戻される。
こんな単純な事を毎日繰り返している僕らは、物好きだと人は言うだろう。
学校の屋上で考え事をしながら朝食を摂り、彼が来るのをここで待つ。僕にとってはこういう日常は、嫌いではない。きっと彼も同じように考えているに違いないだろう。毎朝、屋上にいる僕に声をかける。そんな日常を、彼は嫌ってはいないと思う。
わかるんだ。
だって、僕らは似たもの同士だから。
「おはよう。優太」
「…おはよう」
僕が振り返って笑いかけると、彼もぎこちないながらも笑顔で返してくれる。
振り返った顔に合わせて、屋上のドアの前にいる彼に体を向けた。手に持ち直した牛乳は、もう飲み終えていた。
「やっぱ牛乳だけじゃお腹ふくれないね」
「…」
優太は僕の前にやってきくると
「だろうな」
といって、僕の唇に、自分の唇を重ねた。
僕も負けずに彼を求めるように、牛乳を離した右手で、彼の頭を押さえた。
「ん」
お互いの息が熱くなるにつれて、キスも深くなる。
運命とは、なんと残酷なのだろう。
僕らは出会ってしまった。
お互いに惹かれ合い、結ばれることはないと分かっていても、離れることは出来ない。
悲しい、悔しい思いが胸を渦巻く。
「由貴」
でも、この声が聞こえるだけで、僕は幸せなんだ。
運命なんて、残酷だとしか思えない。
けれど、僕に幸せを教えてくれた君に出会えたのが、運命のせいだというのなら、嫌いにはなれない。
いつか僕らには、別れなければならない日が来るだろう。
兄と弟。
この壁は、とても大きい。
でも、君を愛しいと思う気持ちは、もっと大きい。
大きいんだ。
end...