BL短編
□生徒会長の不満
1ページ/2ページ
俺の名前は磯宮圭斗(イソミヤケイト)。桜塚学園の高等部生徒会長を務めている。
はっきり言おう。俺は腐男子だ。と、いってもほんのかじる程度の入門したばかりの初心者だったりする。
そもそもこの桜塚学園に初等部の頃からいたから、男だらけの学校、男同士の恋愛は、俺にとっては普通の世界だった。
でも何時のことだったか……。きっかけは忘れたものの、俺はネットを通じて全寮制男子校を舞台とした小説の存在を知った。
自分が実際に全寮制男子校に通っているものだから、最初はどんな内容なんだ、と軽い好奇心で読み始めた。
そしてはまった。
なんなんだこの面白さは!
今まで読んでいた純文学や推理物とは別の面白さがそこにはあった。
全寮制で男子校で、金持ちの家柄の奴らがいるこの桜塚学園でも、もしかしたら同じ舞台が作れるかも――!とは思ったが、肝心の俺が生徒会長なのでは思うようには行かない。人生って難しいよな……。
だって何を隠そう俺は俺様生徒会長×平凡が一番萌えるんだ。現実で見えればもうこれ以上ないほどにタンゴでも踊ってその感動を表現するんだが、その俺が生徒達を統率する生徒会のトップの座についているから、どうあがいても無理なんだよなー。俺は萌えを求めてはいるけれど、自分がその対象になるのは論外なのよ。
まぁそんな俺が生徒会に入ったのは、もとを正せば自分のためだった。
だって、今回の生徒会役員は、王道というものを知った俺にとってはパラダイスだったんだ!
去年の生徒会長は卒業してしまっていないが、他のメンバーには策士と名高い腹黒副会長、双子の学園アイドル書記に無口なワンコ会計。庶務には意外と純情なチャラ男と、まさに王道パラダイス!しかも全員が美形ときたもんだ!
これはもう近場で観察してみたくなっちゃうでしょ腐男子野郎共!そして王道転校生が来ちゃった時には萌えまくり……!
その誘惑に負けました。欲に負けちゃいましたよ。だからさはやく来いよ!ビバ王道!!
……そう意気込んでみたはいいけれどもさ、よーく考えてみれば、いくら王道生徒会メンバーが揃っているといっても、揃ったこと自体が奇跡なんだよ。つまりさ、
「転校生来ないやん」
そこまで都合のいい話はありませんでした。そして結局何も起こらないまま、卒業しちゃいました。無念。
end...