BL短編
□初恋だった
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あいつが分からなかった。
ずっとそばにいたはずなのに、それは俺の独りよがりだったんだな。
思い起こせば、あいつはいつも俺なんかを見てはいなかった気がする。
いつもいつもどこか遠くを見ているような目をして……俺はいつも気づかないでいたんだ。
いや、本当は気づいていたのかもしれない。見ないふり、気づかないふりをして……自分を見てほしいと、躍起になっていたのかもしれない。
でももう、俺は疲れたんだ。
小さな頃からの幼なじみである俺よりも、昨日今日会ったばかりのあいつの方を、お前は選んだ。
別に、選んでくれなかったからとか、怒っているわけじゃない。
ただ、今までの俺は何だったんだろうか。と、思ってしまっただけ。
お前にとっては、いつも近くにいるうるさい奴……いや、視界にも入っていなかったのかもしれない。お前の外見に惹かれている奴らと、俺は同じ場所にいたのかもしれない。
でもさ、俺はお前のことが好きだった。
言葉を返してくれなくても良い。俺をお前のそばにいさせてほしかった。
この気持ちは今も変わってはいない。けど……悲しいんだ。
悲しみの泥沼にはまったように、悲しみの渦に引き寄せられてどんどん離れていく。
お前の背中を追いたいのに、体はどんどん重く沈んでいく。
どんどんどんどん深い場所へ落ちていく俺を、お前は決して振り返ることも、思い起こすこともないだろうな。
「さようなら」
言葉にしたくはない。けれど言葉にしなくちゃ、俺はいつまでもお前を追いかけようとしてしまう。
でも、一つわがままを言うならば、最後に一度、俺の名を呼んでほしかった。
一度でいいから、俺を呼んで、その目に俺を映してほしかった。
でも、
「……」
きっと俺の言葉はお前には届いていない。
お前との最後にそれを知るのが怖くて、俺はお前に背中を向けて、涙を流した。
end...