BL短編
□仲良し残業
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「ねー」
「んー?」
「暇ぁ」
「仕事してるのに?」
外はとうに日が暮れて、月が顔を覗かせ輝きだした頃の生徒会室。
雑務係である近藤義隆(コンドウヨシタカ)と、副会長である柴崎炎(シバサキホムラ)は、2人して、高校生という若さにも関わらず、残業をしていた。
生徒会には他に、書記、会計、そして会長というメンバーがいるはずだが、彼らのデスクに、その持ち主たちの姿はない。あるのは副会長と、長机で作業をしている雑務係たち2人の姿だけである。
台という台にはメモや資料や書類などが、今にもずり落ちそうなほどに乱暴に置かれている。
処理済みと書かれたケースには、次々と書類が置かれていくが、部屋中に溢れる紙の海は、一向に減る気配はない。
「なんかさー。やることが単調すぎて、つまんないんだもん」
副会長、柴崎炎はそう言って、肩の凝りを解すように腕を動かした。
「義隆も、適当に休んでおかないと身が保たないよー?」
「もうちょっとしたら休む」
そう言った雑務係、近藤義隆はパソコンで作った資料を印刷している間に、素早く他の書類を取りに行こうと腰を上げた。床は失敗した文章や、菓子パンの空き袋など、様々な物が落ちていて、ひどく汚い。しかしそれらを一切気にせず踏みつけていく彼は、案外大雑把な性格なのかもしれない。
「そう最初に言ってから、一体何十分経ってるのさ?」
炎は心配そうに眉をひそめた。
「さあ?」
「さあって……倒れないでよ?あいつ等のせいで君が体調崩したら、オレ我慢できないからねー」
炎は生徒会長のデスクを冷めた目で見つめ、拳を握りしめた。自分の定位置に戻った近藤は、その姿をあきれたように見つめる。
「そんな怖い顔だけじゃ、あの人たちは殺せないよー。殺るなら隙をつかなくちゃ」
無表情に物騒なことをさらりと吐く彼も、中々に鬱憤が溜まっているようである。炎は頬を膨らませて
「でもさー。あいつらオレたちがこうして毎日毎日てめぇらの分まで仕事やってるってのに、あんな可愛くもない礼儀知らずの宇宙人になんか夢中になっちゃってさー」
バッカみたーい。
冷めた視線から軽蔑の視線に変わり、炎は鼻で笑う。そして何を思ったのか、席を立ち上がると、近藤の背後に回ってその肩を抱きしめた。
「義隆の方がよっぽど可愛いのにー」
「可愛くないし」
先ほどとは打って変わったとろけるような笑顔と、対する無表情。どちらがどっちかは、言わずともがな。
「オレにとっては可愛いのー。義隆はオレの大事な大事な恋人だもん」
「俺にとっても、炎は大事な恋人だよ」
「……義隆」
「なにさ?」
「キスしてい?」
「……あそこの書類片づけたらね」
「ケチー」
仲良しな恋人たちは、今日も愚痴を言い合いながらも、仲良く残業するのでした。
end...