BL短編
□400hit記念"苦手な物に挑戦してみよう!"
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――ピンポーン!ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピ――
「だぁーーっ!うるさぁーーい!!」
ドカッ
俺は玄関だというのも気にしないで、思いっきり扉に蹴りを入れた。
メキッ
以前同じ事をやって、オートロック機能が壊れたことは頭の隅。それが昨日のことだとしても気にしない。
バコッ
「あぶっ」
そして耐えきれなくなった金具が外れて、扉が廊下にいた奴の顔面に体当たりをしていようが、それは無視する。というか自業自得だ。
「ふぇ。……いたい」
額を押さえ、目を潤ませている茅原牧(カヤハラマキ)は、180もの高さから俺を見下ろしてきた。
「お前はそんなデカい図体してチキンか。三歩歩いたら忘れるチキンなのか。一度鳴らせば気づくって、昨日言ったよな?」
10センチ以上もの身長差も気にせずに、俺はギロリと不機嫌な目を上に向けた。
「だ、だって」
昨夜も同じような会話をしたよなー、と思いながら、何か言おうと口を金魚のごとくパクパクしている奴の言葉を待ってやる。
「心臓、ドキドキ、手、ブルブル」
訳:緊張して手が震えてああなった。
去年の俺だったら高確率で理解し得なかった単語の羅列を、こいつの性格とか今までの経験データから、その単語がどういった意味なのかを考え、並べて繋げる。うん。大体こんなような意味なんだろう。
……なんか自分の言語理解レベルがハンパなく上がっているなと思うのは、きっと気のせいじゃない。テストでも、赤点はとらなくなってきたし。特に現国。
「別にそこまで緊張しなくてもいいと思うけどな……」
俺が自分の言葉を理解してくれたと分かると、涙なんぞどこへ行ったか、パァアアっと顔を輝かせる牧。
「良、大好き……!」
怒られていたことすら頭の隅に追いやって、牧は俺に抱きついて、耳元でそんな言葉を言うものだから、
「ば、ばかっ」
なんて、まだ聞き慣れない台詞に耳を赤くしてしまう俺だった。
end...