BL短編

□+と−=△(仮)
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 俺はついているのかいないのか分からなかった。

 腐男子の(少なくとも俺にはね)好物である王道が、同じクラスにいるにも関わらず……。

 カツラに瓶底眼鏡、俺様理論を振りかざす、正に王道も王道の転校生。色んな妄想をすれば、萌えは次々と浮かんでくるし、ネタもつきない。

 以前の俺だったら、もう遠慮も無しにハァハァ言っていただろう。

 けれど実物の王道転校生は、そこまで良いものじゃなかった。

 王道ってもんは離れて見ているからこそ萌えるもので、近すぎる位置からははっきりと言おう。うざいとしか言いようがない。

「あっ賢斗〜!」

 転校初日から、不良わんこ、つまり親衛隊持ちのルームメイトを手なづけ、情報によると、既に生徒会メンバーとも面会済みらしい。

 ここまでは、百点満点だった。

 だが、それからの王道転校生――宮川司――に、俺は胸のムカつきを押さえられなかった。

 そこまで至った経緯をお話しよう。





「あーお前ら! 今日は季節はずれの転校生がこのクラスに来た」

 俺のクラスの担任は、白いスーツに濃いピンクのカッター。髪は金髪でしかも美形。大人の魅力を備えたホストっぽい先生だ。

 昔不良だったせいか、口は乱暴ながらも情には厚く、生徒達からの人気も結構ある。

 転校生の情報は既に入手済み。

 昨日一日で案内役の腹黒副会長の作り笑いを見抜き、双子を見事に見分け、会長に遠慮のない言葉を投げかけた。書記である遊び人には一目惚れされ、おまけにカツラに瓶底眼鏡をしているらしい。しかも不良わんこはルームメイトだという。それに担任のあの満面の笑顔。あれは確実におとしている。これほどまでに完璧な舞台があるだろうか?

 偶然同じクラス。ということは、これからしばらくの間、萌えを間近で観察できる! ウワホーイ!

 なんて喜んでいたのもつかの間。話の流れで席替えをする羽目になった。

 何故席替えをする事になったかって? これからの萌えを想像していたらいつの間にか決まっていたんだ。まぁ、大方宮川司の我が侭だろう。

 席はクジで決めることになり、俺はこの時ほど転校生の我が侭を恨んだことはない。

 決まった席はそれぞれ、宮川司は廊下側の一番後ろ。そしてその前には、ルームメイトである不良わんこ。そして左隣は……腐男子仲間の北見雪乃でした。

「そんな……」

 ぽつりと呟いた雪乃の姿に、俺は我が身のことのように心が痛んだ。雪乃は俺と同じ腐男子ではあるが、その彼の萌えの中に王道転校生は存在しない。王道といえば、その王道転校生に何故か懐かれる平凡。というのが存在する。

 実を言うと彼はそれを一度経験していた。しかも小学生の時に。まぁ、すぐさまこっちに転校してきたらしいが、あの言いようもない不快感はハンパなかったらしい。

 今でも王道転校生と聞くだけで、全身が痒くなると言っていた。あ、これジョーダンじゃなくて事実……てちょっ血が出ちゃうからやめなさい! じゃないと君の白くてもちもち肌には赤色が凄く映えてしまって興fゲフンゲフン。

 まぁそんな雪乃は、いつも言っていた。

「次僕が王道転校生と関わることがあったら、何があってもこの手で潰してやる!」

 何を、とは言わないでおく。雪乃が先ほどの台詞の後に、

「アイツのなんか触りたくない……」

 と言っていたのが聞こえようとも、俺は何も知らないフリフリ〜。




 数分後。案の定、隣の席である雪乃に絡んだ転校生は、

「ミギャアアアアア!」

 やられた。

 ご愁傷様、転校生君。

 合掌をしつつも、笑いをこらえすぎて、胸がむかむかした俺だった。

 まぁ、こんなオチ。


end...
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