BL短編

□寝ぼけた彼にご用心
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 こいつは懲りないのだろうか?

「スカー」

 毎度のごとく、待ち合わせの店に俺が行くよりも先に飲んでできあがっていた直紀は、ぐっすりと熟睡していた。

 いい加減、自分のが先に着いたときに、できあがるまで飲んでいるのはやめてほしいと思う。それを運ぶ俺の身にもなれってんだ。

「じー」

 そして俺は今、直紀をベッドに寝かせてその顔をガン見している。

 なんで寝顔を眺めてるかって?そりゃあ

「……海斗」

 なーんて寝言で名前呼ばれちゃ、なんか気になっちゃうし。というかさっきから

「海、斗……」

 海斗海斗と俺の名を連呼するばかりで、全然進まないんですけど。いったい何の夢見てんだよ直紀のやつ。

「海斗……」

「はーい。さっきからいるぜ〜」

 いつもは直紀を部屋に送ったあと、俺はそそくさと帰路につく。だが、寝言を話す直紀が珍しくって、ついつい居座りすぎてしまった。気がつけば既に夜中を回ってしまっていて、自分ちに帰るのが正直面倒くさい。

 だから、とりあえず返事をしてみたのだが、それがいけなかったらしい。

 ぱしっ

 寝ているはずの直紀は、いとも簡単かつ的確に、俺の手を取った。

 そして何をするのかと思ったら、

 ごろっ

 俺の手を大事そうに両手で包み込み、俺の方に体を向け、またスヤスヤと寝始めた。

「……」

 自分の手を抱き枕にされて、なんかこっぱずかしい。でもそう思うのと同時に、いつもおちゃらけている直紀が、猫のように甘えてくるのが嬉しくて、

「……」

 直紀の顔を暫く眺めながら、俺はベッドにもたれ掛かるようにして、寝た。

 やっぱり、たまには酔いつぶれててもいいぞ。直紀。


end...
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