BL短編
□それほど好き
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僕には好きな人がいた。
いや、間違えた。僕には好きな人がいる。
言葉を交わしたこともないし、ただの僕の一方的な思いにすぎないけど、廊下ですれ違うときとかもドキドキして、彼の声が聞こえただけで、嬉しかった。
だからかな。階段で足を滑らせたのは。
彼の笑い声が聞こえた方に、思わず顔を向けて、そしてバランスを崩してしまった。
「――!」
ああ。でも、あなたが僕の名を呼ぶ声が聞こえた気がして、このまま頭を打って死んでもいいかもしれない。とか思ってしまった自分に、少し笑ってしまった。
幻聴でもいい。あなたに呼んでほしかった。
「っていう夢を見た」
「夢オチかよ!」
end...