ShortT
□離れていても。
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あれから一ヶ月。
私は普通の暮らしに戻りつつあった。
でも時々、辛くなる。
それは、ツインのベッドに一人で寝る時。
一人分の食材を買ってくるとき。
翔の好きだったお香を焚いてみたとき。
ふとした瞬間に辛さがこみ上げてくるんだ。
そういうとき、この丘にくるの。
この思い出の場所に一人で来るとなんか翔が近くにいる気がするの。
「しょーぅ。」
一人だし、ここは誰も来ない場所だからいいか。話しちゃお。
「聞いて?あのねー今日翔が好きだった花見つけたのー。
でね。翔このはな好きだったなとか思い出しちゃったらさ。
なんか。
悲しくなっちゃってさ。」
私の声は空に舞い上がって消える。
涙もいつの間にか流れていた。
風がビュっと吹く。
「もう大丈夫だよ。
離れてても、海のダンナさんは俺だから。
だから海?
俺の分も長生きして?
ね?海?涙を拭いて?
ねぇ?海―−‐・・・」
「翔?」
この声は確かに翔だった。
「翔。会いに着てくれたんだ。
ありがとう」
涙を拭いて星空を見上げる。
「翔?わたし、もう大丈夫。
翔、大好き。愛してるよ。」
「ありがとう。俺も―−‐
愛してる」
それっきり翔の声は聞こえなくなった。
でも寂しくなんかない。
翔がいつも見ている気がするから。
ねぇ翔?
あったりめーだろ。
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