イナイレの夜

□焼き芋


「なぁ、フィディオ・・・」

「なんだい、マーク?」

「日本には秋になると焼き芋というものを落ち葉を集めて焼く風習があるらしいんだが・・・」

「それをやってみたいって?」

「いいのか?」

「勿論、君の願いなら何でも叶えるよ」


そう言って始まった、二人だけの焼き芋パーティー。

まず、落ち葉を集めて山にして
それから円堂に日本から頼んで送ってもらった焼き芋の材料となるさつまいもを、
水に浸した新聞紙で包んでからアルミホイルに包んで山の中に入れる。
そしてそれに父さんから借りたマッチで火をつけて30〜40分ぐらい出来上がるのを待つ。


「暖かいな、フィディオ」

「そうだね、最近寒かったし心地いい暖かさだね」

「フィディオ・・・」

「なんだい?」

「くっついてもいいか?」

「!勿論」


それから焼けるまでの間、俺とマークはずっと寄り添って焼けるのを待っていた。
手を繋いでぎゅっと離れないくらいにくっついていた。


「そろそろ焼けたんじゃないか?」

「そうだね、そろそろいい頃かも・・・」


そう言って、俺は近くに置いてあったはさみで焼き芋を掴んで引き出す。
そして、軍手をはめてから芋の真ん中のところをぎゅって押して食べごろかどうか確かめる。


「うん、丁度食べごろだね」

「よし、それじゃー食べるぞフィディオ」

「熱いから気をつけてね、マーク」

「あぁ、・・・いただきます」

「いただきます」


はむっとホクホクの焼き芋を二人でほうばる。
すると食べた瞬間に広がる甘い味と香り。
初めて食べる焼き芋に思わず俺は叫んでしまった。


「美味しい!」

「むっ、確かに上手い・・・。だけどまだ熱いな・・・」

「もうちょっと冷ましてから食べたら?」

「だけど、焼き芋は温かい内に食べたほうが美味しいって一哉が言ってたんだ」

「でも、熱くて食べれないのはマークだよ?
だったら美味しさがちょっと落ちても冷めてたほうがいいんじゃない?」

「うっ・・・、確かに」

「だからもう少しだけ冷めるの待ってみようよ、ね?」

「分かった・・・」


そう言って早く少しでも冷めるようにマークは焼き芋に向かって息を吹きかける。
一生懸命にそれを行う姿をちらっと見て、
思わず可愛いなんて思ってしまう俺は、相当マークに入れ込んでる。


「フィディオ、そろそろ食べてもいいかな?」

「あ、うん。いいと思う」

「それじゃあ・・・、はむっ」

「どう、お味は?」

「美味しいっ!黄色いとこが甘くてほわんって口に広がって!」

「それはよかった」

「フィディオ」

「?何、マーク??」

「ありがとな、食べさせてくれて」

「!いえいえ、だって言ったでしょ?」


君の願いなら何でも叶える、って。





<焼き芋>


(君との未来も、この焼き芋のように甘く幸せにおくれたら・・・)

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